2008年5月11日 (日)

沙慈&ルイス&絹江&刹那SS

 沙慈とルイスは幼馴染だった。保育園の頃から一緒で、ルイスは幼稚園時代から、

「あたしは大人になったら沙慈のお嫁さんになるんだもん!」

 と、主張していた。

 そして、小学校、中学校、高校と同じ学園に進み、二人は自然に付き合うようになっていった。ルイスの方がいつも積極的に沙慈を引っ張り回す。沙慈にとっては、それは半分嬉しく、半分困ったものだった。休日は必ずデート。ルイスは実家がお金持ちだったこともあり、いつも沢山のお小遣いをもらっているようだった。姉、絹江と二人きりで暮らしている沙慈は当然経済的にルイスより下だ。だからデートの費用はいつもルイスが用意してくれる。何だか申し訳ない気持ちで一杯になる沙慈だった。

「沙慈、明日予定開けといてね。洋服見に行きたいの」

「ああ。判ったよ。ルイス」

 金曜日の放課後、ルイスが土曜日の約束を申し出てきた。沙慈に断る理由はない。と、言うより断れないといった方が正しい。

 ルイスは嬉しそうに笑顔を見せた。

「春用の洋服一杯買うんだ~」

「ルイス、あれだけ持っているのにまだ買うの?」

 沙慈が半分呆れたようにいう。

「女のコはいつでも目一杯お洒落したいものなの! 沙慈にはその辺が判ってない」

「そう?」

「そうよ」

「姉さんはあまり気を使ってないみたいだけれど……」

ルイスは口を尖らせた。

「人と比べない! あたしはあたし、絹江さんは絹江さん!」

「ご、ごめん、ルイス」

 そして互いの家が近づいてきた。

 沙慈はいつものようにルイスを部屋まで送っていく。スペインから単身留学しているルイスは高級マンションに部屋を借りていた。

「じゃあ沙慈、ここでいいから」

「うん」

 マンションのセキュリティを解除しながらルイスがいう。

 沙慈はルイスに手を振ると、自分の住むマンションの方へ足を向けた。今日は絹江が早く帰ってくると言っていた。姉のために夕食を作ろうと、沙慈は商店街に寄って行くことにした。八百屋で野菜を買い、肉屋で肉を買い、スーパーで足りないものを買うと、沙慈は足早に自宅へ向かった。

 マンションに着く。すると隣に住む少年……刹那が帰ってきたところだった。

「刹那君! お帰り!」

 沙慈が挨拶する。

 刹那は無言で沙慈の方を向くと、軽く会釈して部屋に入っていった。

「相変らずだなぁ。刹那君」

 そう言うと、沙慈も自宅のドアを開ける。まずは掃除だ。朝、ばたばたしていて散らかったまま出かけてきたので、沙慈はエプロンをつけると部屋を片付け始めた。やがて部屋が綺麗になる。次は夕食作りだ。二人分の煮魚を作り、野菜の煮物を作る。ご飯を炊き、味噌汁が出来た頃、絹江が帰ってきた。

「姉さん、お帰り」

「ただいま、沙慈」

 絹江は仕事で相当疲れているようだ。

「姉さん、ご飯できているよ」

「有難う沙慈。もう仕事でくたくたなの。お腹空いたわ」

 そう言い、絹江と沙慈は食卓につく。

 二人分の食事は15分ほどで綺麗になくなった。野菜の煮物が少し余っている。沙慈は刹那に差し入れようと、鍋を持って玄関を出た。

「姉さん。お隣さんに差し入れしてくるから。お風呂沸いてるから先に入っていて」

「うん。そうさせてもらうわ」

 そう言うと、絹江は電話を留守電に切り替えると、脱衣所へ向かった。

 沙慈は刹那の部屋のインターフォンを押す。

「何か用か? 沙慈・クロスロード」

 刹那が無愛想に対応する。だがそれもいつものことだ。沙慈は笑顔で、

「夕食作りすぎちゃって。刹那君、食べてくれる?」

 と言った。刹那は、

「判った」

 と部屋のドアを開ける。沙慈から鍋を手渡され、早く食べてねとの言葉に頷く。

「明日鍋を洗って返す」

「明日は僕用があっていないから部屋の前に置いておいて。姉さんも仕事だし」

「判った」

 刹那はそう答え、ドアを閉じた。

 沙慈はベッドに入りながら、明日ルイスと東京のブティック街を歩き疲れるほど歩くんだろうなと思う。テロが起きることを、沙慈はこのとき知りもしなかった。

FIN

ガンダムマイスター&マリナSS

 マリナはコレクターだった。今まで隠し撮りしたガンダムマイスターの写真を眺めて悦に入る。シーリンが手配してくれたパパラッチは完璧な仕事をしてくれた。特に強く頼んでおいた、刹那の写真はもう100枚以上ある。
「刹那君……ああ、刹那君」
 マリナがつぶやく。シーリンはそんなマリナを冷たい眼差しで見ていた。

 一方、プトレマイオスでは。
 ぞくっ! 刹那が寒気を感じる。それがマリナのつぶやきのせいだとは誰も知らない。
 マイスター一同はブリーフィングルームに集まっていた。
「最近誰かに見られている感じがするんだよなぁ」
 ロックオンがいう。
「私もそう感じている」
「僕も」
 ティエリア、アレルヤも同意する。
「俺もだ……何だか地球に降りるのが怖い」
 刹那もいう。
 そこへスメラギがやってきた。
「次のミッションよ。アザディスタン王国とユニオンが手を組んだらしいわ。アザディスタンに駐留予定のMSがかなりあるみたい。貴方達はそれを潰して来て欲しいの」
「アザディスタン……」
 刹那がつぶやく。
 どうも、アザディスタン近辺に行くと、監視されている気がするとロックオンがスメラギに告げる。
「あまり気にしないことね。だって貴方達、普段はノーマルスーツなんでしょう? 顔を見られたわけじゃないんだから」
 スメラギはそう言うと、ブリーフィングルームから出ていった。

 翌日。
 ガンダムマイスターたちがプトレマイオスから各ガンダムで飛び立った。目的地はアザディスタン王国。
 だが刹那は寒気がしていた。何だか行きたくない。しかしミッションだから仕方ない。
 まず、アザディスタンの中心都市は避けて、山間部に降り立つ。
 マイスター一同は一度ガンダムから降りると、改めて任務を確認しあった。当然ヘルメットは取っている。
 その様子をシーリンが手配したパパラッチが、マイスター達をカメラに収めようと岩陰に貼りついていた。
 そっと身を起こし、カメラのファインダーを覗く。
 よし! いいタイミングだ。皆素顔を晒してこっちには気付いていない。
 パシャ、パシャとパパラッチは写真を撮っていく。
 そのとき、ロックオンがその音に気付いた。
「誰だ!」
 他のマイスター3人も腰から銃を取りだし、構える。
「出て来い! 今まで俺達を監視していたのは貴様だな!」
 ロックオンは身を翻すと、岩陰のパパラッチの目の前に降り立った。
 パパラッチの襟首を掴み、鋭い眼光で威圧する。
「てめえ、覚悟は出来てんだろうな。俺達の秘密を知ったからにゃ生きては帰せねえ」
 怯えるパパラッチ。
「いや、私はただ、この国の皇女に頼まれて貴方達の写真を撮っていただけです! スパイとか監視者とか、そういうわけではありません!」
「そんな話、信じられるか!」
 そう言うと、ロックオンはパパラッチを撃ち殺した。
 カメラががしゃんと落ちる。
「こりゃ望遠用のかなりいいカメラだな。今まで俺達を撮っていたというのは満更嘘でもなさそうだが……」
 刹那は寒気が消えるのを感じていた。
 一同は任務に戻るべく、再びガンダムへ搭乗した。

 一方、アザディスタン王国のマリナの部屋。
「シーリン、今日当たりガンダム達がやってくる筈よね。パパラッチからの連絡は?」
「無いわ。貴方もいいかげんにしたら? それだけ写真持っていれば充分でしょう?」
「でも刹那君が……」
 シーリンの冷たい言葉に、マリナは落ち込む。
 そして数時間後、ガンダム達がユニオンのMSを徹底的に破壊することはまだ、マリナもシーリンも知らなかった。

FIN

2008年5月10日 (土)

ロク刹SS

 ロックオンの元に通信が入った。毎日必ず寝る前に刹那から通信が来るのだ。というより、ロックオンが刹那にそうさせている。二人は恋人同士だった。まだ肉体の関係は持っていないが、お互いに好きあっている。
「ロックオン。今日何か変わったことは?」
「いや、無いぜ。いつもどおり訓練して、ミススメラギにミッションの有無を確かめてそれで終わりだ」
「そうか」
 刹那が答える。今刹那は地球の経済特区・東京にいる。
 ロックオンは宇宙のプトレマイオスだ。二人は離れている間、通信を毎日しようと約束していた。そして刹那はその約束を必ず守った。
 ロックオンはそれが嬉しかった。ロックオンの方から連絡を入れることもあったが、大半は刹那からの通信が多い。今まで人を信じることをしなかった刹那が、初めて心を開いた相手がロックオンだったのだ。それゆえ、刹那は二人きりになると甘えてくる。その普段とのギャップもロックオンには愛しかった。
「早くロックオンに会いたい」
 通信の中の刹那がいう。
「じゃあ明日、俺の方から会いに行く。いいか?」
「ミッションはどうなんだ?」
「大丈夫だ。次のミッションの予定は一週間後。まだ時間はある」
 ロックオンが告げる。刹那は途端に嬉しそうな顔になった。
「何時に来る?」
「そうだな。朝イチで出発するから昼前になるな」
「じゃあ昼食を用意して待っている」
 刹那が作ってくれる料理……。初めて食べることになる。
「できたらグラタンがいいな。俺好きなんだ」
 ロックオンの言葉に、刹那は、
「グラタンだな。判った。じゃあ明日。お休み」
 と告げると通信を切った。
「刹那の作ってくれるグラタンか。楽しみだな」
 そういい、ロックオンは眠りについた。

 翌日。
 ロックオンは軌道エレベーターを使って地球に降りてきた。経済特区・東京の刹那のマンションに向かう。
 刹那への手土産に、赤いバラの花束を買ってある。ロックオンは、マンションの刹那の部屋のインターホンを押した。
「ロックオンか?」
「そうだぜ。刹那」
「待っていて、今開けるから」
 刹那がマンションのドアを開ける。エプロン姿の刹那を見たロックオンは、その余りの可愛さのあまり、刹那をぎゅっと抱き締めた。
「ろ、ロックオン」
 刹那が真っ赤になる。
「ごめん。あまりに可愛かったものだから」
 ロックオンは言うと、刹那に花束を差し出した。
「有難う……凄く良い香りだ」
 刹那がロックオンからのプレゼントを受け取る。
「グラタンできているから、早速食べよう」
「そうか。楽しみだな」
 二人はキッチンへ向かった。
 刹那ができたてのグラタンを運んでくる。マカロニをふんだんに使用したクリームグラタンだ。ロックオンは嬉しそうに言った。
「俺、これ大好きなんだ。有難う、刹那」
「味の方は保障しないぞ」
「構わない。刹那が俺のために作ってくれたんだから」
 刹那は僅かに頬を染める。
「頂きます」
 ロックオンはそう言うと、グラタンをスプーンですくって口に運ぶ。
 その様子を刹那は恐る恐る見ていた。味に自信がなかったのだ。
「うん。美味い。刹那、お前いい嫁さんになるぜ」
「ロックオン……有難う」
 そう言うと、刹那も食事を始めた。
 そしてささやかな昼食は終わった。
 二人で皿を洗い、部屋を片付ける。
「これから喫茶店にでも行って、お茶でも飲まないか?」
 ロックオンのデートの誘いに、刹那はこくんと頷く。
 二人は晴天の暖かい陽気の中、楽しい午後の一時を過ごそうと、東京の町へ出かけるのだった。

FIN

ロックオン&刹那SS

 春なのにちょっぴり寒い日。ロックオンは任務で刹那に会いに経済特区・東京へやってきていた。
「もう5月だってのに、この寒さはなんだよ」
 刹那の部屋に着き、ロックオンが発した第一声がこれである。
 事実、5月なのに気温は10度くらいしかなかった。
「刹那、お前寒くないのか?」
「別に、そう言うのは感じない」
 そっけない一言に、ロックオンは「そうだ、こいつはこういう奴だった」と思う。
 取りあえず、刹那が淹れてくれた温かいコーヒーで一息つく。
「ごちそうさん」
「それより、任務ってなんだ?」
 刹那の問いにロックオンが答える。
「ここで開かれるサミットに各国のMSが援護でやってくるらしい。下手をしたら戦争の火種になるかも知れない。俺達の任務はそれを倒すことだ。1機残らず」
「判った」
 刹那は部屋のカレンダーを見た。サミットまであと3日。
「エクシアはどうしている?」
「近くの公園にある大きな池の中に隠してある」
 ロックオンは出撃の度に池に飛び込むのか、こいつは、と思い、デュナメスを見つかりにくい森の中に隠してきたことを告げた。
「そこじゃすぐ見つかる」
「判っている。すぐに移動させるつもりだ。刹那、お前も任務の度に池に飛び込んでいないで、もうちょっとましな隠し方しろよ」
 ロックオンは苦笑していう。
「判っている」
 刹那は頷いた。この寒さでは池に飛び込んだら風邪を引くだろう。
 ロックオンは「じゃあな」というと、刹那の部屋から出ていった。
 そしてデュナメスの隠し場所へ行き、東京から遠く離れた山地に隠す。携帯食料を取り出して一口かじる。明後日はハードな一日になりそうだ。そうロックオンは思う。

 翌日、刹那は、ノーマルスーツに着替えてから、池に飛び込み、エクシアの元へ向かった。エクシアのコクピットに乗り込み、エアコンを全開にして、コクピット内を乾かす。そして刹那はエクシアを池から飛び立たせた。ロックオンからの連絡で、すでにロックオンのいる場所が判っている為、刹那はその方向に向けエクシアを飛び立たせた。
 ロックオンはエクシアが飛んでくるのを見つけた。光通信で合図を送る。エクシアからも返事が帰ってきた。
 そしてエクシアは山地に降り立ち、デュナメスと共に明日の出撃に備えることになった。
 ロックオンが通信を入れて来る。
「今日も寒いな」
「そうか?」
「だって気温、昨日と殆どかわらねェぞ」
 事実、今日の気温は11度。昨日と1度しか違わない。
「刹那、風邪引いてないだろうな」
「大丈夫だ。ノーマルスーツに着替えてから池に飛び込んだ」
 それを聞いたロックオンはちょっと残念そうに言った。
「なんだ。寒かったら俺が暖めてやろうと思ったのに」
「そういう冗談はよせ」
 刹那が不機嫌な声で答える。
 ロックオンはくすりと笑った。
「冗談だよ、冗談」
 半分本気だったのだが、刹那には通じなかった。
「明日にはアレルヤとティエリアも合流する。それまで休め、刹那」
「ああ。そうさせてもらう」
 刹那はそう言うと、コクピット内でノーマルスーツのまま眠りについた。
「ロックオン、ロックオン、モウネルジカン! モウネルジカン!」
 ハロの声に、ロックオンも眠ることにした。
 寒さを防ぐ為、コクピットに備えてあった毛布を被る。
「しかし、刹那の奴、ホントに寒くないのかね」
 そう言うと、ロックオンも眠る為目を閉じた。

FIN

スパロボMX 電童SS

 ブライトがブリーフィングルームで皆に告げた。

「次に行くのはGEAR本部だ。そこで新しい特機とパイロットを受領することになっている」

GEAR……?」

 聞きなれない単語に、ヒューゴはおうむ返しに言った。

「対ガルファの秘密組織だ。知らなくても無理はない。私もつい最近知ったからな」

「ガルファとはなんです?」

 アクアが質問した。

「ガルファとは地球侵略を狙う機械生命体と聞いている。詳しいことはGEARの責任者、渋谷長官が教えてくれるだろう」

 ジュドーは口を尖らせた。

「地球侵略を狙う異星の生命体ね。ホント、地球には全然平和が訪れないんだな」

「そうよね」

 ルーも続ける。

 そしてネェル・アーガマは地球に向かって降りて行った。

 一方、星見町。

 一台の引越しトラックがあるこじんまりとした喫茶店の前で止まった。中から栗色の髪をした、綺麗な顔の少年が降りてきた。続いてその母親であろう女性も。短くカットされたやはり栗色の髪が柔らかなウェーブをしている。目元はきりっとしており、かなりの美人だ。

「北斗、引越しの本格的な作業は業者さんに任せましょう? 圭介さんは仕事で遅くなると言っていたし」

「そうだね。母さん」

 北斗と呼ばれた少年の足元で、一匹のボーダーコリーが吠える。

「ジュピター、お行儀良くして」

 北斗の言葉に、ジュピターはとたんにおとなしくなった。

「北斗、どこか行って見たいところはある?」

 北斗は答えた。

「じゃあ学校が見てみたいな」

「そうね。明日から通うところだもんね」

 北斗の母親……草薙織絵が言った。

 さっそく二人は近所の星見小学校へ向かう。北斗は5年1組に転入することが決まっていた。

 時間はもう放課後。思い思いに帰る生徒や、グラウンドで遊んでいる子供達の姿が見て取れる。

「はっ! ふん! ほ!」

 少林寺拳法の型をしている少年がいた。北斗の長い前髪とは違い、綺麗に刈り上げられた坊主頭で、短い足で華麗に空中を切る。

(昨日はまた母ちゃんに負けた。修行してあのキングオブハートや竜崎一矢さんみたいに……)

「あ? なんだ? お前」

「いや、変わったダンスだなと思って」

「ちゃうわ! これは少林寺拳法! って、おめえ誰だ!」

「ごめんごめん。僕、草薙北斗。明日からここに通うんだ」

 坊主頭の少年が答える。

「俺は出雲銀河。銀河系の銀河。いい名前だろ」

「うーん。変わってるね」

「おめえの北斗とかいう名前も変わってるじゃねえか」

 銀河がむきになって言った。

 そこへ織絵がやってくる。

「あら北斗、もうお友達が出来たの?」

 その時、織絵の左腕に隠して嵌めてあった時計からコールが鳴った。

「!」

「どうしたの? 母さん」

「何でもないわ。二人とも早く家に帰りなさい。私は用があるから」

 そう言うと、織絵は二人の前から去っていった。

 そこへ警報が鳴る。

 銀河は慌てて鞄を手にすると、家に向かって走り出した。北斗も走り出す。

「なんでついてくるんだ」

「僕の家、4丁目の明日から開店する喫茶店なんだ!」

「げ、じゃあ、お前、俺んちの隣に引っ越してきたやつか!」

「ええ? お隣なの? 銀河君」

 お互いに驚く銀河と北斗。

「ついてこい、とっておきの近道があるから!」

「あ、待ってよ、銀河君!」

 二人は星見体育館の方へ走り出した。

 その頃、星見町の中心街には、機械帝国ガルファの尖兵、チップと呼ばれる機獣が3体現われていた。GEAR隊員の吉良国は混雑する街中で、車を降り、自力で星見体育館へ向かっていた。

「吉良国はどうした?」

 渋谷長官の言葉に、オペレーターの浅野愛子が答える。

「現在、星見町で徒歩で現場に向かっている模様です」

「長官、私も行きますわ」

 さっと天井から降りてきた長い金髪に蒼いベレー帽、白いマスクと体にぴったりとマッチングしているレオタードを着た女性がいう。

「うむ。べガ君、頼む」

 数分後、べガを乗せたワルキューレと呼ばれるバイクが華麗に空中を切って、GEAR本部から飛び出して行った。

 その頃、星見体育館付近では、チップたちが無差別に街を攻撃していた。巻き込まれる形となった銀河と北斗は、チップたちに向かって叫んだ。

「なんだってんだよ!」

「この、馬鹿野郎~!」

 そのとき、奇跡が起こった。星見体育館の地下から巨大な蒼いロボットが現われたのだ。

 ロボットは銀河と北斗を両手で掴むと、悠然と立ちあがった。そして二人をコクピットへといざなう。まるで主が帰ってきたのを喜ぶように。

 それを見ていた吉良国は、

「電童が起動した……誰も乗っていない筈なのに。長官、どうしましょう。僕、乗りそこなっちゃいました」

 とつぶやく。現場に到着したべガもその一部始終を見ていた。渋谷長官に連絡を入れる。

「どういうことかね。べガ君。電童は君と吉良国で動かすはずじゃなかったのか?」

「恐らくは、あの二人が選ばれた、ということでしょうね、電童に。コクピットの映像を下さい。私が彼らに話をします」

 べガのバイザーに電童のコクピットが映し出される。

(そんな! どうしてあの子が!)

 動揺する思いを押し隠し、べガは二人に話しかける。

「そこの子供達!」

「え? お姉さん、ここが見えているの?」

 銀河は下ろせー! と叫んでいる。北斗は驚いたように言った。

「そうよ、そこはGEAR戦士、電童のコクピットなの。さぞ驚いたことでしょうけれど、それはお互い様だわ。貴方たちにやって欲しいことがあるの。目の前にゲーム機みたいなものがあるでしょう?」

「あるけど……」

Aを1回。LLを2回。目の前の刺し込み口に差し込んでエンター!」

「わ、判った」

 銀河も降りるのを諦めて、べガのいう通りにする。

 すると、今まで電童の顔を覆っていた白いバイザーが立ちあがり、ロボットの顔がはっきりと見えるようになった。

「二人とも姿勢を正して! 1、2の3で右足を前に」

べガの命令に、素直に従う二人。

「1、2の3」

「1、2の3」

 電童が動く。ソレを見た渋谷は驚く。

「起動した。電童が!」

 しかし電童はチップの横を通りすぎ、そのまま逃げ様とした。

「!? 何をしてるの二人とも!」

「こうやって逃げろってことじゃあ」

「ちっがーう! 電童は戦士なのよ。ここで戦わなくてどうするの!」

「えー!」

「ええー!」

 銀河と北斗が叫ぶ。べガは叱りつけた。

「だって俺たちただの小学生だぜ! 戦いなんて出来るもんか!」

「それに武器は? 弓とかヨーヨーとかビームライフルとかないの?」

 北斗はアニメオタクなのか、スーパーロボットが持っていそうな武器がないかべガに尋ねる。

「ないの」

「えー!」

 北斗は再び叫ぶ。銀河が言った。

「北斗、やってみようぜ。俺の少林寺拳法の技なら何とかなるかもしんねえ」

「わ、判った、銀河君」

 襲いかかってくるチップに、電童は銀河と北斗の動きをトレースして、滑らかに少林寺拳法の技を繰り出す。

「疾風三連撃!」

 チップがその攻撃を受け、粉みじんに爆発した。残りニ体のチップもあっという間に倒される。べガは一安心した。だがそこに、ギャンドラーのデビルサターン6が部下を率いて現われた。

 その数の多さにべガは舌打ちする。このままでは……。そこに、ネェル・アーガマが到着した。

「なんだ、あの蒼いロボット」

 ジュドーがいう。

「あれがGEARの特機かも」

 アクアの言葉に皆納得したような顔をした。

「ともかく、我々も出よう。ヒューゴ、アクア、お前達も頼む」

「了解です。ブライト大佐」

 ヒューゴとアクアはサーべラスに乗り込む。ジュドーたちもZZガンダムやZガンダム、スーパーガンダムや百式、メガライダーで出撃する。

 そして、ギャンドラーのコマンダー達に一斉に攻撃を開始する。ベガのワルキューレ、電童も協力する。あっという間にギャンドラーは倒され、デビルサターン6は捨て台詞を吐いて去っていった。

 ブライトは胸をなでおろすと、GEAR本部へ連絡を入れた。

 1時間後、ブライトはGEAR本部で渋谷長官やべガと対面していた。渋谷はいう。

「どうだろう? 電童とべガ君を君達に預けたいのだが」

「元よりそのつもりです。しかしパイロットが小学生とは……」

「その辺のフォローは吉良国に抜かり無くさせている。安心していい」

 ブライトは答えた。

「了解です」

「私はオブザーバーとして電童と共に向かいます」

「貴方の戦い方は見事でした。べガさん。ぜひ協力して欲しい」

 べガは素手(メジャー)でギャンドラーの面々を倒したつわものであった。ワルキューレはサイズが小さい為、敵の攻撃はかすりもしなかった。

 新しい戦力をネェル・アーガマは歓迎した。

 銀河、北斗は特別少年見学ツアーに選ばれたことになっている。翌日、吉良国が銀河と北斗をネェル・アーガマに連れてきた。格納庫の電童を見て、北斗が言った。

「もう電童が運び込まれてる」

「あ、電池だ。でっけー。電童って電池で動いてたのか」

 同行してきたドクター井上がいう。

「太陽エネルギーで動かすことも検討されたんですが、それだと雨の日に困るんです」

「それに、夜とかもね」

 同じく同行してきたオペレーターの愛子がいう。

「珍しい特機だな」

 ヒューゴの言葉にアクアも頷く。

「確かにそうね。電池で動くっていうあたりは、この前のエヴァ2号機に似ているけれど」

 そこへ銀河、北斗がやってきた。

「初めまして、ヒューゴさんですよね? サーべラスのパイロットの」

「ああ」

 ヒューゴが答える。

「こちらはアクアさんですね。宜しくお願いします」

 北斗が礼儀正しく言った。

 こうして電童チームはマグネイト・テンへ加わることとなった。

 厳しい戦いを経て、銀河、北斗が真の力を発揮するのは、それからずっと経った頃になる。

FIN

ロックオン&スメラギ&ビリーSS

 スメラギは経済特区・東京の競馬場に来ていた。ロックオンが4人のマイスターの中で貧乏籤を引いて、スメラギのお供である。
「うわー、燃えるわね! ロックオン」
「同意を求められても困るんですが」
 だがスメラギはその言葉を聞いていなかった。ロックオンは以前、ギャンブルに手を出して痛い目に遭ったので、もう足は洗った。今はスメラギが競馬に夢中になっている。
「ここはやはり大穴狙いよね~。13-4と」
「ミススメラギ、堅実にいった方がいいと思いますよ」
 だがこの言葉もスメラギは聞いていなかった。
「じゃあ私、馬券買ってくるから。場所取っておいてね、ロックオン」
 そう言うと、スメラギは人ごみの中に姿を消した。
 15分後。レース開始5分前にスメラギが戻ってきた。何故か男を連れている。良く見ると、その男は長い髪をポニーテールみたいにしていた。
「旧友のビリーと偶然会っちゃって。連れてきちゃった」
「クジョウ、君、競馬なんてするの?」
 カタギリはスメラギをコードネームではなく本名で呼んだ。内心ロックオンが驚く。
「初めてよ。私予測とか超得意だからきっと当たるわ」
 カタギリは溜息をついた。
「でも僕にまで馬券買わせなくてもいいだろうに。ただ通りがかっただけなんだから」
 スメラギはビールの缶を開けると、カタギリに言った。
「大丈夫大丈夫。負けたら奢ってあげるから」
「謹んで受けさせていただきます」
「あの。ミスクジョウ、俺は?」
「ああ、ロックオン。貴方にも奢ってあげるから」
「謹んで受けさせていただきます」
 話を合わせる為とはいえ、ロックオンは初めてスメラギを本名で呼んだ。ちょっと照れくさい。
 男二人は、奢ってあげるの一言で情けなくお供をすることになった。
 ファンファーレが響く。いよいよレースの始まりだ。
 ゲートが開き、馬達が一斉に走り出す。
 一番人気は1-3だ。だがスメラギやカタギリの買った馬券は13-4。超大穴だ。
「全財産はたいたんだから勝ってもらわないと!」
 スメラギはビールの缶を握り潰し、馬券片手に、
「13-4! 13-4! 13-4! 刺せ刺せ刺せ! いけ~!」
 と、超興奮している。
「全財産買ったのか……」
 ロックオンが呆れたようにいう。かくいうカタギリも、財布の中身はすでにからっぽだった。無理やりスメラギに買わせられたのだ。
 ところが、本命馬の1-3が遅れ始めた。
 スメラギはガッツポーズを取る。
 13-4が来る。
「来た来た来た来た! 13-4! 13-4!」
「本当かよ……」
 つぶやく男二人。
 そしてスメラギの予測どおり、13-4が当たった。場内は本命馬が外れたことで一斉にブーイングが起こる。スメラギは得意そうに言った。
「ね? 当たったでしょ。これで8000万は稼げたわ」
「は、8000万?」
「じゃあ僕は600万稼いだことになるのか」
 カタギリが驚く。
「凄いね。クジョウ。相変らず君の予測はばっちりだ」
「でしょー! じゃあ二人とも! これから呑みに行くわよ!」
「謹んでお供させていただきます」
 男二人は、換金の手続きをすると、スメラギと共に夜の街へ向かうのだった。

FIN

2008年5月 8日 (木)

ロク刹SS

 刹那はロックオンの誕生日に何をあげたらいいか迷っていた。自分の誕生日にロックオンからプレゼントを貰ったので、何かお返ししなければと考えていたのだ。そういう頭の堅い所が刹那らしいといえば刹那らしい。

 刹那は東京の中心街に来ていた。ある宝石ショップで、ロックオンの瞳と同じエメラルドグリーンのペンダントが売られているのを見た。結構な値段だったが、刹那はそれにしようと決め、店に入った。

「あの、これを……」

「贈り物ですか?」

 店員が尋ねる。刹那はそうだと頷いた。

 数分後、刹那は綺麗にラッピングされたペンダントの箱を持って店から出てきた。ロックオンの誕生日にこれを贈ろう。喜んでくれるかは判らないが。

 そして数日後、ロックオンの誕生日がやってきた。今刹那はプトレマイオスに帰ってきている。

 刹那は0時きっかりを過ぎるのを待って、ロックオンの部屋を訪ねた。

「ロックオン、いるか?」

「ああ、起きてるぜ。入ってこいよ」

 ロックオンが部屋のロックを開ける。

「……」

 刹那は無言で部屋に入る。相変わらずきちんと片付いていて居心地の良さそうな部屋だ。マイスターのリーダーだけあって、4人のうち一番広い個室を与えられている。

「セツナ、セツナ!」

 ハロが跳ねる。

「どうした? 刹那?」

 ロックオンが優しげに刹那にいう。刹那は思いきって後ろ手に隠していたプレゼントの箱を差し出した。

「25歳おめでとう。ロックオン」

 ロックオンは一瞬驚いたような顔になると、すぐさま笑顔を浮かべ、刹那のプレゼントを受け取った。そして刹那の腕を取ると、自分の方へ抱き寄せる。

 刹那の耳元でロックオンが囁く。

「ありがとな。刹那」

刹那は頬が染まるのを抑えられなかった。

「べ、別にそんな大したもんじゃない。俺の誕生日にプレゼントをくれたからそのお返しだ」

 照れたような刹那の言葉に、ロックオンはますます刹那をぎゅっと抱き締めていう。

「そんなかしこまるなよ。俺はまさか刹那からプレゼント貰えるなんて思っていなかったから素直に嬉しいんだ」

「ところでいつまでこうしている気だ」

「朝まで」

 刹那は真っ赤になった。もぞもぞとロックオンの抱擁に抵抗する。

「冗談はよしてくれ」

「そうか? 俺は結構本気なんだがな」

 ロックオンが告げる。刹那は漸くロックオンの抱擁から逃れる。

「プレゼント、開けてもいいか?」
 ロックオンの問いに、刹那は「ああ」と答えた。

「こりゃ本物のエメラルドじゃねえか。かなり高かったんだろ?」

「……ロックオンの瞳の色に似ていると思ったから……ソレだけだ」

「有難う。刹那」

 そう言うと、ロックオンはペンダントを首にかける。

「どうだ?」

「似合っている」

 また刹那が僅かに頬を染めていう。

「宝物にするよ。有難う」

「宝物だなんて……そんな大したものじゃない」

 ロックオンは言った。

「刹那がくれたものなら、何だって宝物だ。俺に取っては」

「ロックオン……」

 ロックオンは再び刹那を抱き寄せた。今度は刹那は抵抗しない。

 そっと刹那の顎を指で持ち上げ、ロックオンは唇を重ねた。

「……!」

 刹那が真っ赤になる。ロックオンは唇を離すと、

「俺は本気だ」

 と、刹那に告げた。

「今は受け入れてくれなくてもいい。でも俺の気持ちは変わらない」

「ロックオン……」

 ロックオンは刹那にひらひらと手を振る。

「今日は最高の誕生日だ。ありがとな、刹那」

「ああ」

 そう言うと、刹那はロックオンの部屋を後にした。

 唇の感触が未だ残っている。温かな、柔らかい唇。刹那は思い出すと再び真っ赤になった。

 胸の鼓動が高まっている。それがロックオンへの好意だということに、刹那はまだ気付いていなかった。

FIN

2008年5月 7日 (水)

ロク刹SS

 ロックオンは思っていた。刹那ほど可愛い奴はいない。いっそ食べてしまいたい。刹那と顔を合わすたびにそう思う。16歳の割には大人びて見えるが、24歳のロックオンから見たらまだまだ子供だ。特にまだ酒も飲めない相手は皆子供に見える。トレミーのクルーも若い人物が多い。ロックオンはその中でももっとも大人の一人でもあった。

 先日、アレルヤが20歳になった。その夜スメラギの元へ行き、一杯飲んだそうだ。翌日、酷い二日酔いになっていたようだが。

 刹那にはまだ酒は早すぎる。でも酔った姿を見てみたい。

「よお、刹那」

「何か用か? ロックオン・ストラトス」

「ちょっとこれ、飲んでみてくれないか」

 トレミーの食堂で、ロックオンは悪戯心で、ミルクにカルーアを混ぜて刹那に飲ませてみた。酒の中でももっとも飲みやすい部類に入るカルーアなら簡単に飲めるだろう。事実、刹那は一気にカルーアミルクを飲み干した。

「ちょっとカカオが入っているのか? 少し苦い」

「まあな」

 ロックオンが答える。

 すると刹那の顔がみるみる真っ赤になった。ぷしゅーと音を立てて、ばったり倒れる。

「刹那!」

 慌ててロックオンが刹那の体を支えた。

 駄目だ。完全に意識を失っている。こんなに酒に弱かったとは。カルーアでここまで酔った人間は初めてだ。

 ロックオンは刹那をお姫様抱っこすると、

「このまま放っておくわけにもいかない。俺の部屋へ連れていくか」

 といい、トレミー内の自室へ向かった。

「ロックオン、ロックオン、オカエリ、オカエリ」

 ハロが出迎えてくれる。ロックオンはハロへ「只今」と返事すると、そっと刹那をベッドに寝かせた。まだ顔が赤い。ロックオンは刹那の顔の火照りを冷ましてやろうと、冷たい水で絞ったタオルを当ててやった。

「刹那……」

 可愛い。寝顔も可愛い。このまま食べてしまいたい。そんな欲求がロックオンの心に沸きあがる。でもまだ一線を越えるほどの仲ではない。刹那はロックオンのことをただのガンダムマイスター仲間としか思っていない。ロックオンの一方的な片思いだ。

「う……ん」

「刹那、気がついたか?」

「ここは?」

「俺の部屋だ。お前いきなりぶっ倒れるからどうかしたのかと思ったぞ」

 自分のしたことは棚に上げて、ロックオンはしらばっくれていう。

「そうか、迷惑をかけた」

 そう言うと、刹那はベッドから起き上がろうとした。しかし、まだ酔いが残っているのか、足元がふらついている。刹那は転びそうになり、ロックオンが慌てて受けとめる。奇しくも抱き合う形となった二人。

 刹那は真っ赤になると、

「離せ」

 と言った。だがロックオンは、

「嫌だ」

 とつっぱねる。刹那は抵抗できない自分に驚いていた。

 ロックオンはきつく刹那を抱き締める。

 刹那はされるがままになっていた。暫く抱き合った後、ロックオンは漸く刹那の体を離した。

「ホント、可愛いな、お前は」

 ロックオンの言葉に、刹那は、

「男に可愛いと言われても嬉しくない」

 と答えた。そこが刹那らしいところと言えばそうである。ロックオンは苦笑した。

 まだふらついている刹那を気遣い、ロックオンは刹那の体を支えて、彼の自室へ送った。

「もう大丈夫だ」

「そうか。じゃあな、刹那」

 ロックオンはそう言い、刹那の部屋を後にした。

 いつか告白すると心に秘めて。

FIN

2008年5月 6日 (火)

刹那SS

 刹那は悩んでいた。いくら牛乳を飲んでも背が伸びない。マイスターのなかで一番小柄でチビな刹那は、そのことにコンプレックスを持っていた。時々ロックオンにからかわれたりもする。そのことが刹那のコンプレックスをよりいっそう強めていた。

 今日も牛乳1リットルを飲み終えると、刹那は空箱をゴミ箱へ投げた。

 綺麗にその空箱はゴミ箱へおさまる。

 お腹は牛乳で一杯だったが、食事もしなければと思い、プトレマイオスの食堂へ向かう。

 途中、アレルヤとすれ違った。

「あれ? 刹那。珍しく遅いね」

「ああ。アレルヤ・ハプティズム」

 アレルヤの筋肉質でたくましく、背の高い姿を見た刹那はちょっと落ち込んだ。

 取りあえず食堂に着く。そこには誰もいなかった。

 刹那は自動的に調理されるパイロット食を選ぶと、ボタンを押した。数分で調理が完了する。刹那はトレーを持つと、椅子に座って食事を始めた。

「よお、刹那」

 ロックオンがやってきた。

「また牛乳飲んでんのか」

 半分からかうようなロックオン。

「悪いか?」

 刹那は憮然と答える。

 それでもまだ背は伸びない。

「いや、悪いことじゃないさ。ただ頑張っているなと思って」

 珍しくロックオンがからかいの言葉を投げてこない。それが刹那には有難かった。

「有難う、ロックオン・ストラトス」

 刹那はそう言うと、食事を終えて席を立った。

 刹那は以前、スメラギに言われたことを思い出していた。

「成長すれば、背は自然に伸びるものよ」と。

 もうすぐ刹那は17歳になる。少しは背が伸びるだろうか。

 少し今まで着ていた服が窮屈に感じる。これも成長の証なのか。

 刹那は前にロックオンから貰っていた、お下がりの服に着替える。

 多少大きいが、成長すればぴったりになるだろう。刹那は少ない家具の中にぽつんと置いてある鏡を見ながら考えた。

 取りあえず、手持ちの服はもう処分することにして、刹那はまたロックオンの部屋を訪ねた。

「どうした? 何か用か?」

 ロックオンが顔を覗かせる。

「少し背が伸びたらしい。今までの服が窮屈だ。以前貰ったように、また何かお下がりを持っていないか?」

 その言葉に、ロックオンは納得したように言った。

「ああ、そういうこと。なら入ってこいよ。沢山あるから」

 刹那は素直にロックオンの好意を受けることにした。

「これはちょっと大きすぎるな。それともこっちがいいかな」

 ロックオンは刹那の体に合わせて次々と服を合わせてゆく。

「おい。俺は着せ替え人形じゃないぞ」

 刹那が文句をいう。

 ロックオンは、

「何、すぐ済むから」

 と再び刹那に服を合わせ始めた。

「まあ、こんなもんだろう」

 ロックオンがいう。選んだ服を紙袋に入れ、刹那は両手一杯の荷物を持って自室へ戻った。

 早速選んでもらった服に着替えてみる。

 確かに多少大きいが、刹那になかなか似合っている。

「よし。早くぴったりになるよう、牛乳もう1リットル飲むか」

 刹那は冷蔵庫を開けた。

 そして「カルシウムたっぷり!」と書かれた牛乳を飲み干す。

 早く背が伸びたい。刹那はその思いで一杯だった。

FIN

刹那SS

 刹那は思っていた。自分は一人でいるのが好きなのだと。

「サミシイ」「カナシイ」「ウレシイ」

 そんな感情はとうの昔に無くしてしまった気がする

 そう、クルジスが滅んだあの日から。

「ソラン……どうして……!」

 母の声が耳に残っている。自分の手で母を撃ち殺した。父も。そのとき刹那は何も感じていなかった。ただ、神の戦士になることだけが目的だった。

 そして、アリー・アル・サーシェスに拾われ、レジスタンスとして戦いつづけてきたのだ。だがクルジスが滅んでからは、刹那は魂が抜けたような生活を送っていた。サーシェスの元から逃げ、小さな町でひっそりと日雇いの仕事をしながら暮らした。自分は誰も愛さないし、愛される資格もないと思っていた。

 そして14歳のある日、ソレスタルビーイングのスメラギという女が刹那の前に現われ、拾われたのだった。

 スメラギとともにシャトルで宇宙に向かうさなか、刹那は窓の外の宇宙の光景を初めて見て夢中になった。今までの生活では絶対に宇宙に上がるなんてことは出来なかっただろう。スメラギがいう。

「貴方のコードネームを決めないとね」

「コードネーム?」

「ソレスタルビーイングでは全員本名ではなくコードネームでお互いを呼び合うことになっているの。貴方のソランという名は誰にも教えては駄目よ」

 スメラギの言葉に、刹那はこう告げた。

「……刹那」