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2008年5月10日 (土)

スパロボMX 電童SS

 ブライトがブリーフィングルームで皆に告げた。

「次に行くのはGEAR本部だ。そこで新しい特機とパイロットを受領することになっている」

GEAR……?」

 聞きなれない単語に、ヒューゴはおうむ返しに言った。

「対ガルファの秘密組織だ。知らなくても無理はない。私もつい最近知ったからな」

「ガルファとはなんです?」

 アクアが質問した。

「ガルファとは地球侵略を狙う機械生命体と聞いている。詳しいことはGEARの責任者、渋谷長官が教えてくれるだろう」

 ジュドーは口を尖らせた。

「地球侵略を狙う異星の生命体ね。ホント、地球には全然平和が訪れないんだな」

「そうよね」

 ルーも続ける。

 そしてネェル・アーガマは地球に向かって降りて行った。

 一方、星見町。

 一台の引越しトラックがあるこじんまりとした喫茶店の前で止まった。中から栗色の髪をした、綺麗な顔の少年が降りてきた。続いてその母親であろう女性も。短くカットされたやはり栗色の髪が柔らかなウェーブをしている。目元はきりっとしており、かなりの美人だ。

「北斗、引越しの本格的な作業は業者さんに任せましょう? 圭介さんは仕事で遅くなると言っていたし」

「そうだね。母さん」

 北斗と呼ばれた少年の足元で、一匹のボーダーコリーが吠える。

「ジュピター、お行儀良くして」

 北斗の言葉に、ジュピターはとたんにおとなしくなった。

「北斗、どこか行って見たいところはある?」

 北斗は答えた。

「じゃあ学校が見てみたいな」

「そうね。明日から通うところだもんね」

 北斗の母親……草薙織絵が言った。

 さっそく二人は近所の星見小学校へ向かう。北斗は5年1組に転入することが決まっていた。

 時間はもう放課後。思い思いに帰る生徒や、グラウンドで遊んでいる子供達の姿が見て取れる。

「はっ! ふん! ほ!」

 少林寺拳法の型をしている少年がいた。北斗の長い前髪とは違い、綺麗に刈り上げられた坊主頭で、短い足で華麗に空中を切る。

(昨日はまた母ちゃんに負けた。修行してあのキングオブハートや竜崎一矢さんみたいに……)

「あ? なんだ? お前」

「いや、変わったダンスだなと思って」

「ちゃうわ! これは少林寺拳法! って、おめえ誰だ!」

「ごめんごめん。僕、草薙北斗。明日からここに通うんだ」

 坊主頭の少年が答える。

「俺は出雲銀河。銀河系の銀河。いい名前だろ」

「うーん。変わってるね」

「おめえの北斗とかいう名前も変わってるじゃねえか」

 銀河がむきになって言った。

 そこへ織絵がやってくる。

「あら北斗、もうお友達が出来たの?」

 その時、織絵の左腕に隠して嵌めてあった時計からコールが鳴った。

「!」

「どうしたの? 母さん」

「何でもないわ。二人とも早く家に帰りなさい。私は用があるから」

 そう言うと、織絵は二人の前から去っていった。

 そこへ警報が鳴る。

 銀河は慌てて鞄を手にすると、家に向かって走り出した。北斗も走り出す。

「なんでついてくるんだ」

「僕の家、4丁目の明日から開店する喫茶店なんだ!」

「げ、じゃあ、お前、俺んちの隣に引っ越してきたやつか!」

「ええ? お隣なの? 銀河君」

 お互いに驚く銀河と北斗。

「ついてこい、とっておきの近道があるから!」

「あ、待ってよ、銀河君!」

 二人は星見体育館の方へ走り出した。

 その頃、星見町の中心街には、機械帝国ガルファの尖兵、チップと呼ばれる機獣が3体現われていた。GEAR隊員の吉良国は混雑する街中で、車を降り、自力で星見体育館へ向かっていた。

「吉良国はどうした?」

 渋谷長官の言葉に、オペレーターの浅野愛子が答える。

「現在、星見町で徒歩で現場に向かっている模様です」

「長官、私も行きますわ」

 さっと天井から降りてきた長い金髪に蒼いベレー帽、白いマスクと体にぴったりとマッチングしているレオタードを着た女性がいう。

「うむ。べガ君、頼む」

 数分後、べガを乗せたワルキューレと呼ばれるバイクが華麗に空中を切って、GEAR本部から飛び出して行った。

 その頃、星見体育館付近では、チップたちが無差別に街を攻撃していた。巻き込まれる形となった銀河と北斗は、チップたちに向かって叫んだ。

「なんだってんだよ!」

「この、馬鹿野郎~!」

 そのとき、奇跡が起こった。星見体育館の地下から巨大な蒼いロボットが現われたのだ。

 ロボットは銀河と北斗を両手で掴むと、悠然と立ちあがった。そして二人をコクピットへといざなう。まるで主が帰ってきたのを喜ぶように。

 それを見ていた吉良国は、

「電童が起動した……誰も乗っていない筈なのに。長官、どうしましょう。僕、乗りそこなっちゃいました」

 とつぶやく。現場に到着したべガもその一部始終を見ていた。渋谷長官に連絡を入れる。

「どういうことかね。べガ君。電童は君と吉良国で動かすはずじゃなかったのか?」

「恐らくは、あの二人が選ばれた、ということでしょうね、電童に。コクピットの映像を下さい。私が彼らに話をします」

 べガのバイザーに電童のコクピットが映し出される。

(そんな! どうしてあの子が!)

 動揺する思いを押し隠し、べガは二人に話しかける。

「そこの子供達!」

「え? お姉さん、ここが見えているの?」

 銀河は下ろせー! と叫んでいる。北斗は驚いたように言った。

「そうよ、そこはGEAR戦士、電童のコクピットなの。さぞ驚いたことでしょうけれど、それはお互い様だわ。貴方たちにやって欲しいことがあるの。目の前にゲーム機みたいなものがあるでしょう?」

「あるけど……」

Aを1回。LLを2回。目の前の刺し込み口に差し込んでエンター!」

「わ、判った」

 銀河も降りるのを諦めて、べガのいう通りにする。

 すると、今まで電童の顔を覆っていた白いバイザーが立ちあがり、ロボットの顔がはっきりと見えるようになった。

「二人とも姿勢を正して! 1、2の3で右足を前に」

べガの命令に、素直に従う二人。

「1、2の3」

「1、2の3」

 電童が動く。ソレを見た渋谷は驚く。

「起動した。電童が!」

 しかし電童はチップの横を通りすぎ、そのまま逃げ様とした。

「!? 何をしてるの二人とも!」

「こうやって逃げろってことじゃあ」

「ちっがーう! 電童は戦士なのよ。ここで戦わなくてどうするの!」

「えー!」

「ええー!」

 銀河と北斗が叫ぶ。べガは叱りつけた。

「だって俺たちただの小学生だぜ! 戦いなんて出来るもんか!」

「それに武器は? 弓とかヨーヨーとかビームライフルとかないの?」

 北斗はアニメオタクなのか、スーパーロボットが持っていそうな武器がないかべガに尋ねる。

「ないの」

「えー!」

 北斗は再び叫ぶ。銀河が言った。

「北斗、やってみようぜ。俺の少林寺拳法の技なら何とかなるかもしんねえ」

「わ、判った、銀河君」

 襲いかかってくるチップに、電童は銀河と北斗の動きをトレースして、滑らかに少林寺拳法の技を繰り出す。

「疾風三連撃!」

 チップがその攻撃を受け、粉みじんに爆発した。残りニ体のチップもあっという間に倒される。べガは一安心した。だがそこに、ギャンドラーのデビルサターン6が部下を率いて現われた。

 その数の多さにべガは舌打ちする。このままでは……。そこに、ネェル・アーガマが到着した。

「なんだ、あの蒼いロボット」

 ジュドーがいう。

「あれがGEARの特機かも」

 アクアの言葉に皆納得したような顔をした。

「ともかく、我々も出よう。ヒューゴ、アクア、お前達も頼む」

「了解です。ブライト大佐」

 ヒューゴとアクアはサーべラスに乗り込む。ジュドーたちもZZガンダムやZガンダム、スーパーガンダムや百式、メガライダーで出撃する。

 そして、ギャンドラーのコマンダー達に一斉に攻撃を開始する。ベガのワルキューレ、電童も協力する。あっという間にギャンドラーは倒され、デビルサターン6は捨て台詞を吐いて去っていった。

 ブライトは胸をなでおろすと、GEAR本部へ連絡を入れた。

 1時間後、ブライトはGEAR本部で渋谷長官やべガと対面していた。渋谷はいう。

「どうだろう? 電童とべガ君を君達に預けたいのだが」

「元よりそのつもりです。しかしパイロットが小学生とは……」

「その辺のフォローは吉良国に抜かり無くさせている。安心していい」

 ブライトは答えた。

「了解です」

「私はオブザーバーとして電童と共に向かいます」

「貴方の戦い方は見事でした。べガさん。ぜひ協力して欲しい」

 べガは素手(メジャー)でギャンドラーの面々を倒したつわものであった。ワルキューレはサイズが小さい為、敵の攻撃はかすりもしなかった。

 新しい戦力をネェル・アーガマは歓迎した。

 銀河、北斗は特別少年見学ツアーに選ばれたことになっている。翌日、吉良国が銀河と北斗をネェル・アーガマに連れてきた。格納庫の電童を見て、北斗が言った。

「もう電童が運び込まれてる」

「あ、電池だ。でっけー。電童って電池で動いてたのか」

 同行してきたドクター井上がいう。

「太陽エネルギーで動かすことも検討されたんですが、それだと雨の日に困るんです」

「それに、夜とかもね」

 同じく同行してきたオペレーターの愛子がいう。

「珍しい特機だな」

 ヒューゴの言葉にアクアも頷く。

「確かにそうね。電池で動くっていうあたりは、この前のエヴァ2号機に似ているけれど」

 そこへ銀河、北斗がやってきた。

「初めまして、ヒューゴさんですよね? サーべラスのパイロットの」

「ああ」

 ヒューゴが答える。

「こちらはアクアさんですね。宜しくお願いします」

 北斗が礼儀正しく言った。

 こうして電童チームはマグネイト・テンへ加わることとなった。

 厳しい戦いを経て、銀河、北斗が真の力を発揮するのは、それからずっと経った頃になる。

FIN

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