ロク刹SS
刹那は考え込んでいた。何故ロックオンに会うと胸が高鳴るのだろう。彼のエメラルドグリーンの瞳を見ただけでドキドキする。声を聞くだけで体が震える。
今まで恋というものと無縁だった刹那は、それがロックオンへの恋だということに気付かず、悶々としていた。誰にも相談できない。当然ロックオン本人にも。
そんなある日、ロックオンが経済特区・東京の刹那のマンションを訪ねてきた。
何の用だろう? ミッションは昨日終え、レポートも提出し、ミッション会議も終わらせたばかりだ。また新たなミッションだろうか。
ドアのチャイムが鳴り、刹那は相手がロックオンだということを確かめてドアを開けた。
「何の用なんだ? ロックオン・ストラトス」
「そうつんけんしなさんな」
ロックオンがいう。
その声を聞き、ロックオンの顔を見ただけで、刹那は呼吸が苦しくなるのを感じていた。
ロックオンはケーキの箱を持っていた。
「すぐ近くに新しいケーキ屋が出来ていてな、お前好きか判らないが美味しそうだから買って来た。二人で食べよう」
ロックオンは刹那にケーキの箱を手渡した。お互いの手が触れる。刹那はドキドキしているのが聞こえはしないかと内心ハラハラしていた。
ケーキの箱を開ける。そこにはショートケーキとチョコレートケーキが1つずつ入っていた。
「刹那、どっちがいい? 俺はどっちでも構わないから」
ロックオンがいう。
「じゃあショートケーキにする」
「そういうと思った」
ロックオンが笑ってウインクする。刹那はその笑顔をずっと見ていたいと思った。
二人分の皿とフォークを用意し、刹那はケーキを取り分ける。ロックオンはキッチンでコーヒーを2人分淹れていた。
午後のささやかなケーキタイムが始まる。
「これが本当のデートならいいのにな」
ロックオンの言葉に、刹那は慌ててむせてしまった。
「おいおい。大丈夫か」
ロックオンが立ちあがって刹那の後ろに回り、背中を叩いてくれる。
「ごめん、冗談だ」
ロックオンがいう。
漸く落ちついた刹那は、
「冗談じゃなくてもいい」
と、思いきって言った。
ロックオンが瞳を見開く。
「本気か?」
こくんと頷く刹那。
ロックオンは再び立ちあがると、刹那の背後に回り、後ろから抱き締めた。
刹那はその温かな感触に触れてほっとする自分と、更にドキドキする自分を感じていた。
「俺もだぜ、刹那。好きだ」
ロックオンからの告白。
「俺もだ……ロックオン……」
刹那も告白する。
暫く抱き合った後、ロックオンは中断していたケーキタイムを再開した。
「お互いに食べ合わせようぜ」
「ああ」
刹那がショートケーキの一部をフォークで刺し、ロックオンの口許に持っていく。
ロックオンはそれをぱくりと食べると、
「美味いぜ、刹那」
と言った。
ロックオンもチョコレートケーキの一部をフォークで刺し、刹那の口許に持っていく。口を開けてチョコレートケーキをぱくりと食べる刹那。
「美味しい……ロックオン」
僅かに頬を紅潮させて刹那がいう。
コーヒーを飲み終わり、テーブルを片付ける。
「ところで本当に何の用だったんだ?」
刹那の問いにロックオンが答える。
「さっき済ませた」
「え?」
まさか……。
「刹那……ずっと好きだった。今言わないと後悔する気がして、今日来たんだ」
「ロックオン……有難う」
刹那が礼をいう。
「礼をいうのはこっちの方だ」
ロックオンはそう言うと、もう一度、今度は正面から刹那を抱き締めた。刹那もその抱擁に応え、ロックオンの背中に腕を回す。
「今度のミッションが終わったらデートしよう。俺がとっておきの場所に連れていってやる」
ロックオンの言葉に刹那は瞳を輝かせた。
「本当か? ロックオン」
「ああ。約束する」
「楽しみにしている」
二人は指切りを交わした。
短い逢瀬が終わり、ロックオンは再び宇宙へ帰っていく。刹那は軌道エレベーターまでロックオンを見送りに行き、彼の姿が見えなくなるまで手を振っていた。



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