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2008年7月31日 (木)

ロックオンSS

18014440_3089288019  ロックオンのプトレマイオスの私室には、幼いころに家族で撮った写真が飾られていた。唯一の形見である。たまたま外出していてテロに巻き込まれなかったロックオンが、ポケットに入れていたものだった。
 もう古ぼけてぼろぼろの写真だが、ロックオンはそれを大切にしている。ほかのものなどどうでもいい。この写真だけがロックオンの心の安らぎだった。だが、ガンダムマイスターとして、プトレマイオスにやってきて、4年の月日が経ってから、ロックオンの宝物が増えた。刹那、アレルヤ、ティエリア、スメラギたち……。彼等とともに撮ったもう一枚の写真が二つ目の宝物だ。ロックオンは二つの写真立てを買い、デスクにそれを飾っていた。写真を見るたびロックオンは思う。自分は彼らを守れるのかと。ガンダムマイスター4人のリーダーとして頑張ってきたロックオンだが、彼もまだ24歳。若さゆえに道を誤ることもある。スメラギのミッションプランはほぼ完ぺきだが、彼女も人間、間違うこともある。それに戦場では何が起こるか判らない。刻一刻と状況は変化してゆく。それに素早く対応するのがガンダムマイスターたちの役目だった。だから時としてロックオンは仲間に厳しく接する時もある。命令違反や勝手な行動を取られたりすると、ミッションが台無しになる。だからこそ、刹那を殴ったこともある。
 自分達はソレスタルビーイングなのだ。ソレスタルビーイングに沈黙は許されない。
 それはロックオンにとって誇りでもあった。
 だからこそ、そんなソレスタルビーイングの矜持を打ち砕くようなトリニティ3兄弟とガンダムスローネの存在は許しがったった。
 スローネは今までソレスタルビーングが決して行わなかった民間人への攻撃もしていた。すでに1000人近い犠牲者が出ている。これではテロリストと同じだ。そのことが、ロックオンを激しく怒らせる原因になっていた。
 その思いはロックオンだけでなく、刹那やアレルヤ、ティエリアも持っているようだった。特にティエリアは、ネーナ・トリニティがヴェーダに勝手にアクセスしたことに大きなショックを受けているようだった。ロックオンはそんなティエリアを気遣ったが、下手な慰めは何にもならないと判っていた。だからこそ何も言わなかった。ティエリアはプライドの高い人間だ。自分のことを話すこともめったにない。だがトリニティ3兄弟の出現で、ガンダムマイスター4人が団結したのは皮肉な話だ。
 刹那は彼らを紛争を起こす要因のひとつと断定し、攻撃することを提案した。スメラギは戸惑ったが、刹那の言うことが正しいというのは、トレミーの誰もが判っていることだった。そしてスメラギは、トリニティが敵の一つであると断定したのである。
 刹那は作戦行動を取るトリニティ3兄弟へ単独攻撃を仕掛けることを提案した。ロックオンもその案に賛成する。
「刹那」
「何だ? ロックオン」
 ロックオンが言う。
「彼等はかなりの強敵だ。やばいと思ったらすぐに逃げろよ」
 出撃する刹那に向かって、ロックオンが気遣う。特にミハエルは危険だ。先日も、トレミーの中でナイフを振り回したのだから。
「判っている」
 刹那はそう言うと、エクシアのコクピットに滑り込み、機体を稼働させた。GNドライヴが輝く。
 ロックオンは出撃していくエクシアを見送りながら思った。
 刹那、絶対に死ぬなよと。

FIN

2008年7月21日 (月)

スパロボA シロー&アイナSS

 シロー・アマダは悩んでいた。今恋仲のアイナ・サハリンがロンド・ベル隊の仲間になったのだが、彼女はジオン公国の貴族の出身。仲間のゲッターチームのサブリーダー、隼人などはあからさまに彼女が本当に味方になったのかと疑問をぶつけてくる。それに対して、シローははっきりと答えられない自分に苛立ちを感じていたのだ。そうだ、ついこの前まではアプサラスで自分たちの前に立ちふさがっていた敵……。
 でもきっと判りあえる。そうシローは信じていた。初めて宇宙で出会った日から、アイナのことを忘れたことは一度もない。雪山で遭難したとき、シローとアイナは力を合わせて生き延びた。ジオンは憎い。でもアイナは好きだ。
 シローは今、ブライト・ノアたちに尋問されているアイナのことを思い、ごろりとベッドに横になった。
 ブライトたちは信頼できる。だが彼等がアイナをどうするか……。
 その時、ブリッジからの呼び出し音が鳴った。シローはスイッチを入れる。
 相手はブライトだった。
「アマダ少尉。アイナ・サハリンの処遇が決まった。すぐにブリッジへ来てほしい」
「了解です。ブライト大佐」
 そう言い、シローはアーガマのブリッジへ急いだ。
 5分後、シローは士官服の詰襟をしっかり閉じると、ブリッジの扉を開けた。
 そこにはアムロ・レイとブライトがいた。
「ブライト大佐、アイナのことは……」
「心配しなくていい。彼女は暫くの間は独房に入ってもらうが、その後は我がロンド・ベル隊の立派な仲間だ」
 ブライトに続けてアムロが言う。
「アマダ少尉、彼女は微妙な立場の人間だ。話を聞くと、彼女の兄や身内同然のグフカスタムのパイロットもジオンに所属しているという。これからが大変だぞ。彼女にも実の兄と戦ってもらうのだから」
 ロンド・ベル隊には同じような境遇の人間もいた。セイラ・マスがそうだ。彼女も「ジオンの赤い彗星」と呼ばれるエースパイロットの妹だった。実の兄妹で戦ってきたのだ。
「大丈夫です。何があろうと、アイナのことは自分が守って見せます!」
 シローはそう答えた。
 ブライトとアムロが僅かにほっとしたような笑顔を見せる。
「アイナ・サハリンの独房入りは3日間だ。その後は自由の身となる。いろいろ彼女のことを気遣ってやってくれ、アマダ少尉」
「頼むぞ」
 ブライトとアムロに言われ、シローはきりっとした顔で敬礼した。
「了解であります!」

 そしてシローは独房のあるブロックへ来ていた。アイナに会うためだ。
 独房の一番奥、小さな部屋にアイナがいた。
「シロー!」
 アイナがシローの姿を認めて立ち上がる。
「アイナ!」
 シローはその部屋へ駆け寄った。
「怪我はないか? アイナ」
「大丈夫です。シロー。貴方の方こそ」
「俺はこの通りぴんぴんしているさ」
 シローは笑顔を見せる。
「独房入りは3日間だそうだ。そのあとは俺達の仲間として正式に認められる」
「いいのかしら……私、ついこの前までジオンの兵士だったのに」
「兄さんと戦うことになるかも知れないが、大丈夫だ。俺がアイナを守る」
 アイナは一瞬辛そうな表情を見せた。
「ギニアスお兄様……」
 シローは元気づけるようにアイナの手を握った。
「また来る。夕飯は俺が運んでくるから。気を落とさないでくれ」
「有難う、シロー」
 シローは名残惜しげに独房から去ってゆく。アイナはシローの姿が見えなくなるまで見送っていたのだった。

FIN

刹那&ロックオンSS

1216630875464102  ロックオンの体温を感じながら、刹那はまどろみから目を覚ました。
 そうだった。昨日、コーヒーの飲みすぎで眠れなくて、枕持参でロックオンの部屋にやってきて眠らせてもらったのだ。
 時計を見ると、時間は午前5時。ちょっと早く起き過ぎてしまった。刹那は自分を抱き締めてくれているロックオンの暖かな腕の感触に、再び眠気が襲ってくるのを感じた。
 ぱふり。
 再び枕に頭を落とし、刹那は目を閉じる。
 すると、睡魔が襲ってきた。刹那は深い眠りに落ちて行った。

 3時間後。
 刹那は目を覚ました。すでにロックオンの姿はない。もう起きて着替えて出て行ったのだろう。なぜその時目を覚まさなかったのか。刹那はなんだかもったいないことをしたと思い、ゆっくりとベッドから起き上がった。
 枕を持ち、パジャマのままロックオンの部屋から出る。
 刹那は自室に向かって歩き出した。
 やがて部屋に着く。刹那は扉をカードキーで開けると、枕をベッドに置き、パジャマから私服に着替えた。歯を磨いてトレミーの食堂へ向かう。
「よう、遅かったな、刹那」
 ロックオンが声をかけてくる。彼の食べていたパイロット食は殆どなくなっていた。
「ロックオン、昨夜は済まない」
「いや、気にするな」
「一度起きたんだが二度寝してしまって……」
 刹那が言う。
「あまりによく寝ているものだから、起しちゃ悪いと思ってな。お前を起こさないようにこっそり起きて着替えた」
「そうなのか」
 ロックオンの言葉に刹那は納得したような表情を見せた。そしてちょっと遅めの朝食を食べるため、食堂のパイロット食のボタンを押す。
 数分してパイロット食が出来上がった。刹那はそのトレーを持つと、ロックオンのいるテーブルに向かった。
 刹那の苦手なニンジンがスープに入っている。
「残すなよ」
「判っている」
 ロックオンに見張られ、刹那はニンジンの塊を無理やり飲み込んだ。
 やがて食堂にアレルヤとティエリアも姿を見せた。
「食事は終わった? 刹那」
 アレルヤが問いかけてくる。
「ああ」
 刹那は空になったトレーをダストシュートに放り込むと、アレルヤに答えた。
「これからミッションのブリーフィングがある。スメラギ・李・ノリエガが待っている。急げ」
 ティエリアは相変わらずだ。
 ロックオンと刹那は苦笑を浮かべると、皆揃ってブリーフィングルームへ向かうのだった。

FIN

2008年7月19日 (土)

アレルヤ&ティエリアSS

17199376_1663415784  ティエリアは早速アレルヤに料理を習い始めた。初日に作ったカレーはなんとか、アレルヤの助言もあって、自分でも良く出来た方だと思った。今日は和食に挑戦することが決まっている。
 流石に和食の食材は少ない。アレルヤとティエリアは、スメラギに許可を貰うと、軌道エレベーターを使って、経済特区・東京へ向かった。築地という市場に到着する。そこでアレルヤとティエリアは、魚や野菜、味噌、料理酒などの食材を調達した。
 早速、トレミーに戻り、昼食作りを始める。アレルヤは器用に魚を3枚におろしていた。ティエリアは大根のかつらむきに挑戦している。
「痛っ」
 ティエリアが包丁で指を切った。
「大丈夫? ティエリア」
 アレルヤはティエリアの手を取る。幸い、そうひどい傷ではなかったようだ。アレルヤはティエリアが怪我した人差し指を自分の唇に持ってゆく。そして傷を舐めた。
 ティエリアは真っ赤になる。
「もう大丈夫だよ、ティエリア」
「あ、ああ」
 念のためと、アレルヤが絆創膏を持ってきた。ティエリアはそれを人差し指に貼る。
 再び大根のかつらむきに挑戦するティエリア。何とか全部むき終わった。次は味噌汁に入れる豆腐とワカメを切り始める。こっちは何とかうまくいった。
 アレルヤは炊飯器のスイッチを入れる。そして魚を焼き始めた。換気扇を回す。室内に魚の匂いが漂った。
 大根のかつらむきを丁寧にそろえると、ティエリアはそれを千切りしはじめた。大根サラダを作るのだ。今度は手を切らないようにと気を配る。
 魚が焼きあがった。今度は味噌汁を作り始める。にぼしで出汁を取り、弱火でことこと煮込んだ。いい具合になったので、アレルヤはワカメと豆腐を味噌汁の中に入れた。あと5分煮れば終わり。魚(タラの切り身)と味噌汁とご飯、大根の和風サラダの昼食が出来上がった。
「ティエリア、左手、大丈夫?」
「ああ。大丈夫だ」
 もう傷は塞がっている。ティエリアは絆創膏を剥がした。
 ご飯を盛り付け、味噌汁を椀につぎ、魚を皿に載せる。大根の和風サラダは大きな皿に入れ、取り皿を2枚用意して、アレルヤとティエリアはそれをテーブルに運んだ。
「ティエリア、箸の使い方は慣れた?」
「まだちょっと……」
「でも頑張って覚えないと。和食はお箸で食べるものだからね」
「ああ」
「頂きます」
 二人が声を揃え、昼食を摂り始めた。魚がなかなか上手く焼けている。
「ティエリア、和食はどう? 気に入った?」
「ああ。なかなか上手く出来ている。健康にも良さそうだ」
 確かに和食はヘルシーだった。
「明日は何を作ろうか?」
「そうだな……ドネルケバブなんかどうだ?」
「いいね。じゃ、また材料を買いに行こう」
 アレルヤが言う。
「そうしよう」
 そしてささやかな昼食は終わった。二人は洗い物をすると、キッチンを綺麗に片づけた。
「じゃ、明日」
「ああ。明日」
 ティエリアはアレルヤに見送られ、自室に戻って行った。
 明日が楽しみだ。アレルヤはそう思うと、エプロンを外し、丁寧に畳んだ。

FIN

2008年7月15日 (火)

刹那SS

17199973_2438675677  刹那は連合軍との戦い後、何とかスメラギ達の脱出艇に救助されて助かった。エクシアはもうボロボロで、戦える状態ではなかった。
「他のガンダムマイスター達は?」
「まだ見つかっていないわ」
 スメラギが刹那に告げる。
 刹那はゆっくりと脱出艇の外を見た。ジンクスの破片があちこちに散乱している。
 デュナメスは脱出艇に積まれていたため、最後の戦いから無傷だったが、エクシアはもう解体してGNドライヴを外さなければならないだろう。
 刹那の鎧となり、武器となった愛してやまない機体。その機体から降りなければならない。刹那は一瞬辛そうな表情を見せた。
「大丈夫よ、刹那」
 スメラギが声をかけてくれる。でも今は一人になりたかった。
「済まない。ちょっと一人にしておいてくれ」
 そう言うと、刹那は脱出艇の中に備えられた小さな部屋へ向かった。
「……っ!」
 涙が浮かんでくる。
「ロックオン……アレルヤ……ティエリア……」
 刹那は3人の名を呼ぶと、声を押し殺して泣き始めた。
 生まれて初めてだ。誰かのために泣くなんて。
 返事なんか返ってこない。ロックオンは死んだ。アレルヤ、ティエリアもどうなったか判らない。せめて2人には生きていてほしい。
 刹那は涙にその願いを乗せた。
 ラッセが最後に、「行け! 刹那!」と叫んだのを覚えている。ラッセもGNアームズごと爆発に巻き込まれて死んだと聞かされた。もう独りぼっちだ。
 今まで当たり前のようにそばにいた人たちがいなくなっただけで、こんなに悲しいなんて。
 刹那は膝を抱えると、ノーマルスーツのまま涙を流し続けた。

 1時間後、スメラギが刹那の元へやってきた。
「キュリオスとナドレを発見したわ」
「本当か!?」
 スメラギの言葉に、刹那は顔を上げる。
「アレルヤは怪我をして気を失っているけど、命に別条はないわ。ティエリアも気を失っているみたい。今ドクターがいないから、フェルトが応急処置にあたっているわ」
 刹那は立ち上がった。
「二人の顔を見に行ってもいいか?」
「ええ。構わないわよ」
 スメラギはそう言い、刹那とともに急遽作られた医務室へ向かった。
 アレルヤとティエリアがベッドに横たわっている。
 アレルヤは頭に包帯を巻いていた。
 ティエリアは眼鏡を外されて、死んだように眠っている。
 そのそばで、フェルトが救急箱をしまっているところだった。
「アレルヤ……、ティエリア……」
 刹那がつぶやく。
「今は静かに眠らせてあげましょう? 刹那。無事だっただけでも神様に感謝しなくちゃ」
「この世界に神なんていない」
 刹那はそう言うと、医務室から出て行った。
 スメラギは苦笑して見守る。
 刹那は窓の外の宇宙を再び見上げた。
 俺達の戦いは正しかったのか?
 まだ答えは見えない。でも俺は戦士だ。まだ戦えるならずっと戦い続けてやる。そう刹那は決意した。

FIN

2008年7月13日 (日)

刹那SS

17199376_4062438347_3  刹那は14歳の時に、スメラギによってガンダムマイスターにスカウトされた。
 正しくはヴェーダが刹那を相応しいと選んだのだが、その詳細は極秘扱いされた。
 刹那はクルジスが滅んだあと、サーシェスのもとでレジスタンスとして戦っていた。
 今はサーシェスから逃げ、日雇いの仕事をしながら何とか生活していた。MSを使っての重機の建築の仕事だ。
 スメラギはどこで刹那のことを知ったのか明かさず、突然刹那の前に現れた。
「貴方の腕を見込んで、ソレスタルビーイングに参加して欲しいの」
 スメラギと名乗る女はそう言った。
 今の生活から一刻も早く抜け出したいと思っていた刹那は、一も二もなくその話に飛びついた。そして本格的にソレスタルビーイングへ参加することになったのだ。
 ソレスタルビーイングは少数精鋭の組織だった。ガンダムマイスターは4人。ラッセが予備候補だ。メカニックはイアン一人。他のマシンのメンテナンスは高性能マスコットロボ、ハロが行う。医療チーフがモレノだ。オペレーターはクリスティナとフェルト、プトレマイオスの操舵士がリヒティだった。スメラギは戦術予報士。ソレスタルビーイングを設立したのは、200年前に死んだと言われているイオリア・シュヘンベルグだった。地球でソレスタルビーイングをバックアップしてくれるのが王留美と紅龍。
 こんな少人数で戦っていけるのかと、刹那は最初不安に思った。だが、地球には戻りたくない。あそこにはいい思い出はない。
 刹那は毎日訓練に明け暮れた。ガンダムエクシアが刹那に与えられ、他のマイスターとともに宇宙に出ては模擬訓練を行う。それが2年続いた。その2年の間に、刹那はガンダムマイスターの中でもナンバーワンと呼べる腕に成長した。
 リーダーはロックオンだが、実質的に最も戦力になれるのは刹那と言えた。
 そしてAEUが新型MS、イナクトのお披露目をするという情報が王留美から入った。
 スメラギはヴェーダのプランに従って、刹那のエクシアをAEUの演習場へ送り込むのが一番だと判断した。戦力的にも1機で充分だろう。
「刹那。すべては貴方の腕にかかっているわ。任せて大丈夫ね」
「ああ。スメラギ・李・ノリエガ」
 刹那が言葉少なげに答える。
 刹那はエクシアのコクピットに乗り込むと、エクシアのOSを起動させた。GNドライヴが順調に稼働し、エクシアの機体がオールグリーンとなる。刹那はエクシアをプトレマイオスから飛び立たせた。目標はAEUの演習場。
 そこでは、AEUの自称エース、パトリック・コーラサワーがイナクトに乗り込み、模擬戦を行っていた。ユニオンからグラハム・エーカーとビリー・カタギリも視察にやってきている。
 コーラサワーは次々に後輩達のイナクトをしりぞけ、高笑いをあげた。
「俺様に勝てるやつがいるもんか!」
 そこへエクシアがやってきた。
「こんなの、予定にあったか? カタギリ」
「いや。僕は聞いていないけれど」
 グラハムがカタギリと会話を交わす。
 コーラサワーは再びイナクトのコクピットに滑り込むと、慌てて機体を起動させた。
 ゆっくりとエクシアが降りてくる。
「エクシア、目標を駆逐する」
 刹那は冷静につぶやくと、イナクト目掛けて攻撃を始めた。
 イナクトが次々に被弾する。
 コーラサワーは、今まで負け知らずだった自分がこんなにも追い込まれていることに焦りを感じた。観客席がどよめく。
 ついにイナクトは地面に叩きつけられた。
 刹那は興味無さそうな視線でそれを一瞥すると、ひらりとエクシアを飛び立たせた。
「ファーストフェイズ、終了」
 プトレマイオスへ連絡を入れ、ミッションが完遂したことを報告する。
「お疲れさま、刹那。王留美の用意してくれた潜伏場所へ向かって。デュナメスとロックオンもすでにそこに着いているから」
「了解」
 刹那は短く答えると、暗号通信で送られてきたその場所へエクシアを飛翔させた。
 ソレスタルビーイングがついに本格的に動き出したのだ。
 刹那達の過酷な戦いが、今始まる……。

FIN

2008年7月12日 (土)

刹那SS

1215766291632629  刹那は買ったばかりのエクシアとパーフェクトグレードのZガンダムのプラモデル制作に、時間を割いては取りかかるようになった。ミッションのときはそれを優先するが、暇を見つけては完成させて飾ろうとこつこつ作っていた。
 特にパーフェクトグレードは制作に時間がかかる。紙やすりを買ってきたので、それで一つ一つのパーツを丁寧に仕上げていく。
 どうにかZの形が見えてきた。完全変形もするように作られているそれは、素人には作るのは難しい。
 携帯端末が鳴った。刹那はスイッチを入れる。相手はロックオンだった。
「よう。刹那」
 いつもの調子でロックオンが話しかけてくる。
「プラモの制作は順調か?」
「まあな」
 刹那はプラモデルを作る手を休めず答える。
「今、PGのZのパーツをやっと全部仕上げにかかっているところだ」
 刹那の周辺には、裏にガンダムマーカーで番号を書いたZガンダムのパーツが一杯散らばっている。
「そうか。俺はデュナメスを組み終えたところで、これからエアブラシで色をつけるところだ」
 ロックオンも答える。
「俺は筆で一つ一つ色を付けるぞ」
 刹那はエアブラシを使うのが面倒なので、塗料を大量に買ってきて、一つ一つのパーツを筆で塗るつもりだった。
「おいおい。それじゃ完成に1カ月はかかっちまうぞ」
「いいんだ。作っている過程が楽しいんだから」
「ま、お前の自由だ。好きに作るんだな。次のミッションは4日後だ。また連絡する」
「ああ」
 ロックオンはそう言うと端末を切った。
 刹那は端末をオフにすると、充電させてプラモデル制作の続きに戻る。
 関節のジョイントのつけ方が難しい。刹那は細心の注意を払って組み上げていく。ようやく脚部が完成した。今日はここまでだ。刹那は全てのパーツを拾い集めると、ZのPGの箱にしまった。
 キッチンに行き、夕食作りにかかる。レトルトのカレーを温めた。ご飯は炊いてあるので、それを皿に盛る。キャベツを冷蔵庫から取り出してサラダを作り始めた。
 カレーが温まったので、ご飯の上に掛ける。カレーの袋は燃えないゴミの袋に入れ、サラダの皿とカレーの皿をテーブルに並べる。
 一人きりの夕食は味気ない。刹那はテレビのスイッチを入れた。ちょうどニュース番組が始まったところだった。
 世界の紛争の様子などが報道されている。
 アナウンサーが言う。
「ユニオン、AEU、人革連が連合軍を結成したと発表しました。4日後に大規模な軍事演習が行われる模様です」
 今度のミッションはこれか。刹那はそう思う。
 ガンダムマイスター達は文字通り世界に喧嘩を売っている。連合軍が作られるのもやむを得ないだろう。
 ニュースが芸能関係のものに変わったので、刹那はスイッチを消した。食事を終え、キッチンで洗い物をする。
 そしてシャワーを浴びようと、着替えを用意してシャワールームに入った。
 シャワーを浴びたらさっさと寝よう。まだ9時前だが、刹那は4日後に備えるため、早く寝ることにした。
 明日にはスメラギからお呼びがかかってプトレマイオスに戻らなければならないだろう。暫くはこの部屋を留守にしなければならない。
 明日は早く起きて、徹底的に掃除をしようと思い、刹那は眠りについた。

FIN

ロックオンSS

17199973_2021879213  ロックオンが珍しく熱を出して寝込んだ。体だけは頑丈なのが自慢だったが、知恵熱でも出たのか、40度近い熱があった。
「刹那……悪い、水持ってきてくれ」
 プトレマイオスに帰ってきていた刹那がロックオンを看病する。
 刹那は水をコップに汲むと、ロックオンが横たわるベッドへ持って行った。
「大丈夫か? 水だ」
「有難う」
 のろのろと身を起こすと、ロックオンは水をゆっくり飲んだ。
 刹那はもう生ぬるくなった氷枕を新しいものに変える。
 そこへアレルヤが顔を覗かせた。
「差し入れ持ってきたんだけど」
「アレルヤ、悪い」
「何か食べないと良くならないよ。これ食べて」
 アレルヤが持ってきたのはお粥の入った皿と梅干しだった。
 ロックオンはその好意に素直に甘えることにした。
 また刹那に水を持ってきてもらい、お粥をゆっくり食べる。食欲はないが、食べなければ薬は効かない。
 やがてお粥の皿が空になり、ロックオンは熱冷ましの薬を飲んだ。
「今はなにも考えず寝ていろ」
 刹那が言う。
 ロックオンは薬の影響もあってか、頭がぼーっとして、眠気が襲ってきた。刹那の言うとおり眠ることにする。
 ベッドに横になり、毛布を被った。
 程なくしてロックオンが静かな寝息を立て始めた。
 刹那は安心したような顔になる。ロックオンの額にそっと手を触れて、自分の額との熱の差を確かめる。少しだが熱は下がっているようだった。
 スメラギの携帯端末を鳴らす。
 すぐにスメラギが顔を出した。
「刹那、ロックオンの様子はどう?」
「さっき食事して、薬飲んで、今寝たところだ。少し熱が下がっている」
「そう。よかったわ。3日後にはミッションがあるんだから、それまでには治ってもらわないと」
「判っている。看病は任せてくれ」
「お願いね、刹那」
 そう言うと、スメラギは端末を切った。
 刹那はベッドサイドの椅子に腰掛け、眠っているロックオンを見つめる。
「う……ライル」
 ロックオンが寝言を言う。ライル? 何のことだ? 刹那が疑問を持つ。
 だがプトレマイオス内では互いの過去などについては詮索しないというのが暗黙の了解になっていたので、刹那は深く考えないことにした。もしかしたらロックオンの本名かもしれない。自分もソランという名を隠している。先日、トリニティのリーダー、ヨハンに暴かれたが。
 ふと、ロックオンは目を覚ました。
「どうした? ロックオン」
「トイレ」
 そう言うと、ロックオンはのろのろ身を起こし、ベッドから立ち上がった。しかし足元がふらついている。刹那は慌てて、ロックオンの体を支えた。
 トイレットルームまでロックオンの体を支える。
「一人で大丈夫か?」
「ああ」
 ロックオンはトイレットルームの扉を閉じた。
 用を足してロックオンが出てきた。手を洗い、再び刹那に支えられてベッドに戻る。
「有難う、刹那。だいぶ良くなってきた」
「それならよかった。スメラギが言っていた。3日後にミッションがあると」
「そうか。それまでには何とか治らなきゃな」
 ロックオンはそう言うと、再び眠りについた。
 刹那はタオルを冷やして、ロックオンの額に当ててやる。以前、看病して貰ったことのお返しだ。
 夕方近くなり、刹那は夕食のためにロックオンの部屋を出た。アレルヤに前もって看病を交代してくれと頼んであるので、その点は安心だ。途中、廊下でアレルヤとすれ違う。
「アレルヤ、頼むぞ」
「うん。大丈夫。任せておいて」
「俺も食事が終わったらすぐに戻る」
 そう言うと、刹那はプトレマイオスの食堂へ急ぐのだった。

FIN

ロックオンSS

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 ロックオンは先日買った、デュナメスのプラモデル2個と、パーフェクトグレードのRX-78-2ガンダムをプトレマイオスに持って帰ってきた。
 ロックオンの帰還に、出迎えに出たアレルヤが、
「その大荷物何? ロックオン」
 と問う。
「ガンプラだ。デュナメス2個とパーフェクトグレードのRX-78-2ガンダムを買ってきた。本当はデンドロビウムも欲しかったんだがな。売られていなかった」
「キュリオスはあった?」
「あったぞ」
 アレルヤは頷く。
「一応僕も1体買って作ってあるんだよね。ちゃんと変形出来てよく出来ているよ」
「そうか」
「2個買ったって、どうするの?」
 ロックオンは答えた。
「1体は普通に組む。もう1体はジオラマ用だ」
「凝ってるね」
 ロックオンは苦笑したように答える。
「一応ガンダムマイスターだからな。刹那の影響を受けて、俺もガンダム馬鹿になりつつある」
 そこへティエリアがやってきた。
「ああ、ティエリア。ロックオンが帰ってきたよ。ガンプラ買いに行っていたんだって」
「そうなのか」
 ロックオンが言う。
「ヴァーチェ、結構大量に残っていたぞ。昔から「太っているガンプラは売れない」というジンクスがあるらしいが、まさにビンゴだな」
 そうなのだ。ZZガンダムを始め、ちょっと太めなガンダムのプラモデルはなかなか売れない。だからパーフェクトグレードになることもない。
「私はナドレにもなれるよう、ちゃんと改造したがな」
「そうだよ。見せてもらったけれど、背中のボタン一つでアーマーパージするようになっているんだ。ティエリア、器用だよね」
 ロックオンが言う。
「俺はジオラマ用に予備のデュナメスも買ってきたぞ」
「でもジオラマに1体じゃ寂しくない?」
「あ」
 ロックオンが今更、という顔をする。
「ミススメラギに言って、また買いに戻るかな」
「ダメだ。明日からミッションだ」
「そんな~」
 ロックオンは仕方ないという風に頭を振った。
 ガンプラは暫くお預け。マイスターのリーダーとしても、ミッションに専念せねばならない。
「刹那には連絡したのか?」
「さっきフェルトが連絡入れていたよ」
 アレルヤが答える。
 刹那もパーフェクトグレードを買ったので、今頃夢中になって組んでいる真っ最中だろう。特にZのPGはパーツが300を超える。
「で、今回のミッションの内容は?」
「今日の夕方、スメラギさんが説明してくれるらしい。何でも王留美から連絡が入ったとか言っていたよ」
「そうか」
 王留美と紅龍の情報なら信頼できる。
 ロックオンは紙袋を抱えると、自室に戻り、名残惜しそうにガンプラの箱をしまった。
 携帯端末が鳴る。スメラギからの呼び出しだ。
「ロックオン、ブリーフィング始めたいんだけれど、来られるかしら?」
「はい。ミススメラギ」
 そう言い、ロックオンは端末のスイッチを切った。
 刹那も画面越しにミッションの説明に参加すると聞かされた。
 早くガンプラ作りがしたいと思うロックオンだった。

FIN

2008年7月11日 (金)

サイバーフォーミュラ11 SS

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 2015年のサイバーフォーミュラグランプリも終盤を迎えていた。
 前年のチャンピオンであり、若干15歳の風見ハヤトは、最初は迷いや驕り、古いスペックでのアスラーダの走りもあって、なかなか表彰台に上がることができないでいた。
 だが、新たなメカニック、クレア・フォートランがアスラーダを11(ダブルワン)に作り替えてくれたおかげと、ブリード加賀の協力で得たイナーシャルドリフトのおかげで、やっと優勝への可能性が見えてきた。
 今、ハヤトの理解者であったナイト・シューマッハこと菅生修はハヤトの前に敢然と立ちふさがっている。他のライバルたちも負けてはいない。ポイントでわずかに迫る新条直輝、ハヤトと同じ年の最大のライバル、カール・リヒター・フォン・ランドル、シュピーゲルの大破で、急きょグーデリアンの代わりにマシンに乗ることになったフランツ・ハイネル。ランドルはシューマッハに対して恐怖心を抱いていた。本物のプロが見せる走りに、遊び気分でサイバーに参戦していたランドルは、走ることへの疑問さえ持ち始めていた。だが、ハヤトには負けたくない。その気持ちから、最終戦へカムバックしてきた。
 ハヤトはあすかが知らせてくれたおかげで、シューマッハが目に異常を抱えており、もうサイバーどころか、レーサーとして走ることが不可能になることを知った。次の最終戦が本当の戦いの最後になる。シューマッハの目はもう限界を迎えている。だが、シューマッハはクレアが止めるのも聞かず、最後までハヤトの前に立ちふさがっていた。最終戦もコースレコードを叩き出したポールポジションを取り、翌日のレースでも優勝候補である。
 だが、葵今日子はシューマッハが目に異常を抱えていることを知っていた。よって、翌日のミーティング中、アオイフォーミュラの打ち合わせでチームオーダーを出した。シューマッハに新条のバックアップを命じたのだ。
「どういうことかな? ポールポジションを取った私の方が、優勝する可能性は高いと思うが」
 シューマッハが言う。
 新条は驚いたように二人を見つめた。
「そうね。今のままだったら、貴方の方が優勝する可能性は高いでしょうね。でもあなたの目、私が気付かないとでも思って?」
「目?」
 新条が驚いたように言う。
「やはり子飼いの新条の方が可愛いと言う訳ですか」
「ちょっと待ってください! バックアップなんてなくても俺は実力で勝負します!」
「甘いわよ、新条君。本当に勝てるの?」
 今日子が厳しく切り捨てた。
「確証はできません。でも、そんな勝利、実力で最下位になる方がマシだ!」
「新条君……あなたという子は。判ったわ! 好きになさい! 負けた時の言い訳は聞かないわよ。メカニックはあくまでも新条君を優先します」
 そう言うと今日子はトレーラーハウスから出て行った。
「フッ」
 シューマッハが笑う。
「いや、失礼。君はよほど優勝したくないと見える」
「何だって?」
「気が変わったらレース開始までには申し出てほしい。失礼する」
 シューマッハもトレーラーハウスを出て行った。
 新条はぐっと拳を握り締めた。

 ユニオンのピットで、再びイシュザークに乗ったランドルは考えていた。なぜまたレースに戻ってきてしまったのだろう。シューマッハの走りには勝てない。だけどハヤトには負けたくない。ハヤトが以前言った、
「最終戦、お前と走れなくて残念だよ」
 との言葉が頭に響く。
 ランドルは思い切ってスロットルを踏み込んだ。

 ハヤトはあすかに告げる。
「どんな結果になろうと、あすかを悲しませるようなことには絶対しないから」
「大好きよ、ハヤト」
 二人はそっと口づけを交わす。

 そして20台のマシンがグリッドに並んだ。チェッカーフラッグが振られ、シグナルが青に変わる。その瞬間、20台のマシンが一斉にスタートした。最初のコーナーを巡って、ハヤトとシューマッハがせめぎ合う。
 アオイエクスペリオンとアスラーダ11は互いに譲らず、サンドトラップの中に突っ込んで行った。2台のマシンが止まる。
「私に対してこうも意地を通すとは……」
 シューマッハは素早くマシンをチェックする。幸い、走りに影響はない。エクスペリオンは即座にレースに復帰した。
 ハヤトもアスラーダに問う。
「大丈夫か? アスラーダ」
「システムオールクリア。次のピットストップまでマシンに影響はない」
 アスラーダの返事が返ってくる。
 ハヤトはアスラーダのスロットルを踏み込むと、再びレースに復帰した。
 アオイエクスペリオンもアスラーダ11も最下位近くに順位が落ちている。だがシューマッハもハヤトもレースを投げていなかった。次々に他のマシンを抜き、順位を上げていく。今一番手を走っているのは新条のエクスペリオンだ。
「新条君、貴方が1位よ。これからはランドルとのタイム差を出します」
 今日子が言う。だが新条は、
「あの二人がこのまま終わるとは思えません。風見とシューマッハのデータも送ってください」
 と返答した。
 今日子はため息をつく。
「判ったわ。新条君、私に言った言葉。忘れていないわよね」
「はい」
「必ず優勝しなさい。貴方のためにもね」
 今日子は通信を切った。

 シューマッハは順調に順位を上げていた。だが目に負担がかかりすぎ、ついにレースを投げる決意をした。コースわきにエクスペリオンを止め、マシンから降りようとする。すると、背後にアスラーダ11が止まっているのが見えた。
「何をしているハヤト! 行け! 走って優勝を掴め!」
「嫌です!」
「何?」
「レーサーは最後まで走って決着をつける。それを教えてくれたのは貴方でしょう! 走ってください。僕は貴方との勝負をきっちり付けたい!」
 シューマッハはその言葉をかみしめた。
「お前は甘すぎる」
「それが僕のレースです!」
 シューマッハは無言でキャノピーを閉じると、再びエクスペリオンを起動させた。スロットルを踏み、コースに戻る。アスラーダ11もコースに戻った。
「ハヤト、お前は私に一番大切なことを思い出させてくれた」
 そしてシューマッハは、
「ナイト・シューマッハの最後の走り、見せてやろう」
 そう言うと、サイバーコンピュータに向かって、全てのレース状況を対物モードに変更し、常にボイスで報告するよう命じた。そして目を閉じる。
 シューマッハは目を閉じたまま、つぎつぎに他のマシンを抜いて行った。
 ハヤトは驚愕する。
「あんな走りができるなんて……シューマッハ。貴方がもうすぐ走れなくなるなんて」
 各チームのピットでは、ちょっとした騒ぎが起こっていた。
 新条のエクスペリオン、ランドルのイシュザーク、ハイネルのシュピーゲル、ブーツホルツのミッショネルがピットインしたのだ。
 今日子が驚いて飛び出してくる。
「どういうつもり? 新条君。緊急ピットインだなんて!」
「風見と勝負します!」
「何をバカな!」
 だが新条はその言葉を無視した。
 ランドルは、グレイスンを呼んでいた。
「グレイスン、僕のレースが判った。ティータイムだ」
「はい! お坊ちゃま!」
 グレイスンがマイセンの茶器で紅茶を用意する。
 ハイネルはシュトロゼックのピットにピットインしていた。
「システムをクオリファイデータに変更! ディスクを!」
 まだ車いすに乗り、包帯を巻いたグーデリアンが言う。
「やだね~、一人前に熱くなっちゃって」
「誰かの悪影響さ」
 ハイネルは不敵にほほ笑んだ。
 ブーツホルツはミッショネルのメカニックに、マシンをチェックするよう命じる。
 そこへ、順位をいよいよ上げてきたアオイエクスペリオンとアスラーダ11がやってきた。新条、ハイネル、ランドル、ブーツホルツがコースに戻る。
 これからが本当の戦いだ。

FIN

2008年7月10日 (木)

ロックオン&刹那SS

17199973_3645813754  今日は月に一度の給料日。ガンダムマイスターの中でももっとも高給取りなロックオンは、電子マネーをカードに移すと、さっそくスメラギの許可をもらって経済特区・日本の東京へ向かった。目的はガンプラだ。
 途中、刹那に連絡を入れてみる。
 携帯端末を鳴らすとすぐに刹那が応対に出た。
「何だ? ロックオン。今昼食の真っ最中なんだが」
 口をもぐもぐさせながら刹那が言う。
「悪い、邪魔しちまって。今から東京に行ってガンプラ買う予定なんだが、お前も一緒に行かないか?」
「そうか、給料日だったな」
「ああ」
「判った。俺もエクシアのガンプラが欲しい。一緒に行こう」
 刹那が答える。
「じゃあお前のマンションまで行くから、待っていてくれ」
「判った」
 そうロックオンは言い、端末を切った。

 やがて経済特区・東京に到着する。ロックオンはトレインを乗り換えて、刹那の住むマンションのある街へ向かった。都心にほど近いその街に到着した。
 刹那のマンションは駅から歩いて5分。途中のケーキ屋でお土産のケーキを2個買い、刹那のマンションに着くとインターフォンを鳴らした。
 刹那がドアを開ける。
「待っていた、ロックオン」
「これお土産。ケーキだ。買い物終わったら二人で食おう」
「有難う。冷蔵庫に入れてくるからちょっと待っていてくれ」
 刹那がケーキの箱を持ってキッチンの冷蔵庫に向かう。
「待たせたな」
 刹那が戻ってきた。
「そうでもないぜ」
 ロックオンはそう言い、二人は近所のプラモデル専門店へ向かった。
 そこは特にガンプラに力を入れているショップで、山のようにガンプラが積まれていた。
「えーと、デュナメスはと」
 ロックオンはプラモの山の中からデュナメスを発掘する。ジオラマ用にともうひとつデュナメスの箱を手にする。
 刹那はエクシアだけでなく、カトキヴァージョンのZガンダムパーフェクトグレードを手にしていた。
「お? 刹那。お前パーフェクトグレードまで買うのか」
「だって給料日だし。前から欲しかったんだ。ZのPG」
「俺もRX-78-2ガンダムのパーフェクトグレード買おうかな」
 ロックオンはそう言うと、その箱に手を伸ばした。
 数分後。
 大きな紙袋を持ったロックオンと刹那がプラモデル店から出てきた。
 二人ともパーフェクトグレードを買ったため、かなり大きな荷物だ。
「早くガンダム試作3号機のパーフェクトグレード出ないかな」
 ロックオンが言う。
「あんな元からでかいMS? と言っていいのか判らないものがパーフェクトグレードになるか?」
「何を! デンドロビウムは美しいぞ!」
 ロックオンが言い返す。
「まあ。それは認めるし、俺も欲しいけれど」
「でも作っても飾るところに困りそうだな」
「ああ」
 そんな会話を交わしながら、二人は刹那のマンションに向かう。
 マンションに着き、二人は早速荷物をほどいた。
「デュナメス2つ買ったのか?」
「ひとつは普通に組むため。もう一つはジオラマ用だ」
 そんなロックオンを呆れたように見る刹那。
「俺に劣らずガンダム馬鹿だな」
「悪いか?」
「いや」
 刹那はエクシアの箱を取り出しながら答える。
 ロックオンは取扱い説明書を読みながらご満悦だ。
 刹那が冷蔵庫からケーキの箱を持ってきた。
「ロックオン、食べよう」
「ああ。食うか」
 箱を開ける。ショートケーキが2つ入っていた。
 刹那はそれを皿に取り分ける。そして二人は付属のフォークでケーキを食べ始めた。
 ミッションもない平和な給料日。こんな日があってもいいなと思う二人だった。

FIN

2008年7月 8日 (火)

アレティエSS

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 アレルヤとティエリアは、二人きりで食事をしてから頻繁に二人で出掛けるようになった。
 今日はミッションもない。アレルヤが以前、新しいパソコンを買った、経済特区・日本の秋葉原がかなりカオスな町だったので、アレルヤはそこへ行こうとティエリアを誘った。ティエリアは当然秋葉原のことなど何も知らない。
 二人で行けば怖くないだろうと思い、そこへ誘ったのだ。

 そして二人は秋葉原に着いた。平日ということもあって、以前アレルヤが行った休日よりは人の通りが少ない。ただ、デブでアニメやゲームのキャラが描かれたTシャツに紙袋のオタク青年たちが闊歩しているのは相変わらずだった。
 アレルヤは興味本位で
「メイド喫茶に行ってみない?」
 と言った。
 ティエリアは何のことか判らず、
「メイド喫茶って何だ?」
「実は僕も初めて行くからよく判らないんだよね。でも秋葉原にはいっぱいあるらしいよ」
「そうなのか」
 そして、二人は路地裏の地下にある、こじんまりとしたメイド喫茶を見つけると、そこのドアを開けた。
「お帰りなさいませ! ご主人様! お嬢様!」
 大勢のメイドが声を揃える。ご主人様とはアレルヤのことで、お嬢様とはティエリアのことだろう。
 ティエリアが不機嫌そうに言う。
「私は男だ」
「失礼致しました! ご主人様!」
 メイド達が一斉に言う。
 二人はテーブル席に案内された。アレルヤはアイスコーヒーを、ティエリアはアイスティーを頼んだ。1杯1000円もする高額なソフトドリンクだが、メイドが何やらサービスをしてくれるらしい。
 やがて二人のテーブルにアイスコーヒーとアイスティーが運ばれてきた。
 メイドがにこやかに言う。
「ご主人様、わたくしめとゲームを致しましょう」
「ゲーム?」
 ティエリアがオウム返しに尋ねる。
「トランプなどはいかがですか? 7並べなど楽しいと存じます」
 アレルヤは言った。
「ああ。いいよ」
「わたくしめが負けましたらご一緒にお写真を撮らせて頂きます。そしてそれを記念にプレゼント致します。宜しいですか?」
「ああ」
 そしてアレルヤとティエリア、メイドの3人で7並べを始めた。
 ダイヤの7を引き当てたアレルヤが一番手だ。
 続いてティエリアもカードを置いていく。メイドも負けじとカードを置く。
 そんな勝負が3分ほど続いた時、アレルヤは持ち手のカードで置けるものがなくなってパスを申し出た。
「ご主人様。では勝負はわたくしめの勝ちでございます」
「え? これで終わり?」
「はい。追加のご注文がありましたら宜しくお願い致します」
 そう言うと、メイドは二人のテーブルから去って行った。
「ずいぶんと厳しいメイドだな」
 ティエリアが言う。
「そうだね」
 そうでもしなければ、高給取りの彼女たちへ払う客からの売り上げが稼げないのだろう。
 二人は飲み物を飲み終わり、アレルヤが代金を払って店を後にした。
 大通りに出る。そのとたん、ティエリアに声がかけられた。
「そこの可愛いお嬢さん。うちのメイド喫茶で働きませんか?」
 相手の男はティエリアが女だと思い込んでいるようだった。
 無理もない。ティエリアは黙っていれば絶世の美少女に見えるのだ。
「おい。私は男だ」
 ティエリアが不機嫌そうに答える。
 男は驚いたような顔になった。
 アレルヤがティエリアの手を握る。
「そんなところで僕の大事なティエリアを働かせないよ」
「済みませんでした」
 男はそう言うと、その場から去って行った。
 ティエリアはアレルヤに尋ねた。
「今の言葉、本気か?」
「え?」
「だから、あの男を追い払った時の言葉だ」
 二人はまだ手をつないでいる。
「……ああ、本気だよ」
 アレルヤが思い切ったように言う。
 ティエリアはアレルヤの手を握り返した。
「私もだ」
「……本当?」
「本当だ」
「ティエリア!」
 アレルヤはティエリアを抱きしめた。人目など気にならなかった。
 こうして二人はソレスタルビーイングでも公認のカップルとなったのだった。

FIN

2008年7月 7日 (月)

ロックオンSS

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 ロックオンは、ある晩、悪夢にさいなまされてがばっと身を起こした。ベッドサイドの時計を見ると、午前2時を指していた。
 その悪夢は、かつて幼い頃、テロに巻き込まれ、家族すべてを失った忘れられない思い出の夢だ。ただ一人取り残され、自分の無力さに泣いた時のことを思い出す。
 ロックオンは軽く頭を振り、汗をかいた身をベッドからのろのろと起こすと、シャワールームに向かった。着衣を脱ぎ、温かいシャワーを浴びる。
 おかげで眠気はすっぱり冴えてしまった。寝なおす気になれず、休眠状態(充電中)のハロのスイッチを入れる。
「ロックオン、ロックオン、ドウシタ? ネナイノカ?」
 ハロが問いかけてくる。
「眠れなくてね。少し付き合ってくれ、相棒」
 そう言うと、ロックオンはハロを小脇に抱え、プトレマイオスの格納庫へ向かった。
 無機質に眠っているように見える機体……ガンダム4体を眺めて、ロックオンは言う。
「なあ、ハロ。俺達の戦いは正しいのかな?」
「ナニヲイッテイルンダ、ロックオン、ラシクナイ、ラシクナイ」
 ハロの言葉にロックオンは苦笑を浮かべる。
「そうだよな。俺が悩んでちゃ、ほかのガンダムマイスターのリーダーがつとまらない」
 ロックオンはデュナメスを見上げる。
 自分の愛機。長距離射撃が得意な機体。
 この機体で、ロックオンは幾度も戦ってきた。ソレスタルビーイングが本格的な戦いを開始したころから、ずっとロックオンの鎧となり、武器となった機体だ。
「いつ終わるのかな」
 そうひとりごちる。
「ロックオン、ロックオン、アス二ヒビク、モウネルジカン」
「ああ。判っている。相棒」
 そう言うと、ロックオンはハロとともに自室へ戻った。
 再びハロを休眠状態にし、充電器の上に乗せると、ロックオンは冷蔵庫からブランデーの瓶を取り出した。
 いっそ眠れないなら酒で気を紛らわしたい。
 カランと音を立てて、グラスに氷が放り込まれる。
 ロックオンはその上からブランデーを注ぎ、水割りを作った。つまみが欲しいところだが、そんな贅沢は言っていられない。
 ゆっくりとグラスを傾ける。
 とたんに、アルコールが回るのが判った。温かいシャワーを浴びた後だからだろうか。
「そういや、今日は経済特区・日本で言う七夕とかいう行事の日だな」
 以前刹那が言っていたことを思い出す。
 笹に願いを書いた短冊を吊るせばかなうという、なんとも子供だましな行事だ。
 ロックオンは昔、サンタクロースを信じていた。それも5歳までの話だ。
 刹那は何か願いごとでもしているのだろうか。いや、あいつのことだから、そんな行事をする訳がないだろう。
 ロックオンは苦笑を浮かべ、再びグラスを傾けた。氷の感触が心地よい。
 そうしてロックオンは、夜明けがやってくるまで飲み続けたのだった。

FIN

2008年7月 6日 (日)

刹那SS

17199973_444990611  刹那はここのところ少し不調だった。ミッションでも前線を任されているのに、敵を取り逃がすこともあった。
 ブリーフィングルームでロックオンが問う。
「おい刹那。お前最近どうしたんだ? ミッションでミスするなんてお前らしくないぞ」
「……」
 だが、刹那はその問いに無言で答えると、ブリーフィングルームから出て行った。
 アレルヤ、ティエリアもそれを見送る。
「刹那、どうしちゃったんだろう?」
「さあな。私には判らない。早く元の調子に戻ってもらわなければ困る」
 心配そうなアレルヤと対照的に、冷たく言い放つティエリア。

 刹那は自室でベッドに横になっていた。
 頭に浮かぶのはエクシアでミッションをミスする自分のこと。
「これで何度目だ……?」
 自分で自分に言い聞かせる。
 だが答えなど返ってこない。
 携帯端末が鳴る。スイッチを入れると、相手はスメラギだった。
「刹那。あなた最近どうしたの? 今日のミスもあなたらしくないわ」
「済まない」
 そう答えると、刹那は端末のスイッチを一方的に切った。
 今、ガンダムは世界の敵扱いされている。エクシアもデュナメスもキュリオスもヴァーチェも、そしてトリニティ3兄弟のスローネも世界の敵だ。
 子供のころに見た、天使のようなガンダム……。俺のエクシアも天使になれるのだろうか。だが今の自分では駄目だと判っていた。
 ごろりと体の向きを変え、枕を抱き寄せる。
 刹那はいつしか寝入っていた。

 スメラギが困ったように言う。
「ミッションプランの変更が必要かもしれないわね」
「ミススメラギ、刹那は今ちょっと調子が悪いだけです。すぐに立ち直ります。あいつはそういうやつです」
 ロックオンが擁護するように告げる。
「そうだといんだけれど……」
「僕もそう思います」
 アレルヤも言う。だがティエリアは、
「ミッション自体から彼を外すべきです。彼はガンダムマイスターに相応しくない」
「おい、ティエリア」
 ティエリアの冷たい言葉に、ロックオンは反論する。
「少しは仲間を信じたらどうだ?」
「今の彼をどう信じろと?」
「……それは」
 ロックオンは言いよどむ。
 今の刹那にあるのは迷いだ。ガンダムが救世主ではなく、世界の敵となったことに、いや、それが判っていても、それが彼に少なからずショックを与えているのだろう。
「兎に角、刹那にはこれからも頑張ってもらうわ。ミッションプランは多少変更を加えます」
 スメラギが言う。
 ロックオンも渋々納得した。ティエリアは無言でブリッジから自室へ向かい出てゆく。
 これからの戦いはますます激化するだろう。
 それまでに刹那が立ち直ってくれなければ困る。
 ロックオンは、束の間の休息の間、刹那を元気づけてやろうと、彼の私室を訪ねた。
 インターフォンを押す。すると数分してから刹那の寝ぼけた声が返ってきた。
「ロックオン?」
「ああ。お前、寝てたのか?」
「ちょっと横になっていたら眠くなって……」
 ロックオンは苦笑する。眠れるなら大丈夫だろう。
「お前、明日暇か?」
「ああ」
 ロックオンは言った。
「じゃあ明日地球に行こう。気分転換だ。俺の奢りでどこへでも連れて行ってやる」
 刹那は扉を開けて出てきた。
「いいのか?」
「ああ」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらう」
「じゃ、明日の朝8時に迎えに来るから」
 ロックオンはそう言うと、ひらひら右手を振りながら去って行った。
 その後ろ姿を刹那はじっと見つめていた。
 刹那が早くも立ち直ることを知る者は誰もいなかった。

FIN

2008年7月 3日 (木)

刹那&子猫SS その3

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 刹那が子猫のエクシアを連れてトレミーに戻ってきた。
 ロックオンたちは一度刹那のマンションに遊びに行き、子猫のエクシアと顔見知りなので、ああ、来たなと出迎えた。大騒ぎしたのはクリスティナだ。
「きゃー! 超可愛い! 刹那! 刹那! エクシアちゃん抱かせて!」
「あ、ああ」
 刹那はクリスティナの勢いに押され、おずおずと子猫のエクシアを差し出す。
 みゃあと鳴いて、エクシアがクリスティナに抱きしめられた。クリスティナはエクシアに頬ずりする。
「真っ白~、可愛い~」
 クリスティナはすっかりご満悦だ。エクシアは抱きしめられて苦しそうに鳴く。
「おい、エクシアが痛がっているぞ」
 刹那が言う。
「あ、ごめん。フェルトも抱いてみる?」
「少しだけなら」
 そう言って、フェルトはクリスティナからエクシアを受け取った。ハロを抱くように優しくエクシアを抱くフェルト。
「本当、可愛い」
 スメラギも興味深げにその様子を覗き込む。
「何歳くらいの子猫なの? 刹那」
 スメラギの問いに刹那が答える。
「獣医に聞いたら3か月くらいの子猫だそうだ」
「だからこんなに小さいのね。でもしつけをきちんとしているところは流石ね、刹那」
 スメラギが言う。
「飼い主としては最低限のマナーだよな、刹那」
 ロックオンの問いに、刹那は頷いた。
 リヒティとラッセもやってきてその輪に加わった。
「うわ、可愛いっすね、刹那」
「拾ったんだって?」
 二人の問いに刹那が答える。
「ああ。雨の日に濡れて鳴いていたので拾った」
「でもマンションでは飼うのは禁止されているんだろう?」
「どうやってごまかしているんすか?」
「まだ3か月の子猫だからな。外には普段出していない。この前漸く散歩に連れて行ったところだ」
 エクシアはフェルトの腕から降りると、刹那の足もとに泳ぐように向かった。トレミーの中は一応1Gあるとは言え、無重力ブロックもある。
 勝手が判らないのか、困ったようにみゃあと鳴く。
「ほら、エクシア、こっちだ」
 刹那が腕を延ばす。エクシアは刹那に抱かれて安心したようにみゃあと鳴く。
「エクシアたん、覚えてまちゅか~。ロックオンのお兄ちゃんでちゅよ~」
「ロックオン、気持ち悪いから止めてくれ」
 刹那の鋭い一言に落ち込む24歳。
「餌は持ってきたの? 刹那」
 アレルヤの問いに、刹那はああと答えた。トレミーでは子猫用の餌は作れない。
「取り敢えず1週間分持ってきた。足りなかったら地球に戻ってもっと買ってくる」
「しかし明日からミッションだぞ」
「判っている」
 ティエリアの言葉に答える刹那。
「相手は人革連だろう? ティエレンタオツーのように強敵もいることはいるが、ユニオンほど苦戦はしないだろう。ミッションは3日で終わらせて見せる」
「強気ね、刹那」
 スメラギが感心したように言う。
 そうでなければガンダムマイスターはやっていけない。
「こいつを守るためにも俺は戦う」
「おい、刹那。戦闘中にもこいつをコクピットに入れる気か?」
「悪いか?」
 一同は呆れたように言った。
「当たり前だろう!」
「宇宙服はどうするの? 猫用なんてないよ」
「操縦の邪魔になったらどうする気だ」
 ロックオン、アレルヤ、ティエリアがたたみかけるように言う。
「トレミーにぽつんと置いておく方が心配だ」
「イアンのおやっさんが許してくれるはずないだろうが」
 ロックオンが言う。
「とにかく連れていく」
 刹那は頑として譲らなかった。その思いにスメラギは折れた。
「判ったわ。イアンさんには私から話しておくから。その代わり、ミッションは約束通り3日で終わらせるのよ」
「判った」
「みゃあ」
 刹那と、彼の腕の中のエクシアが同時に答えた。

FIN

2008年7月 2日 (水)

刹那&子猫SS その2

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 刹那は子猫のエクシアを初めて散歩に連れ出した。目を離すとどこかへ行ってしまいそうなので、首輪と繋ぐ紐付での散歩である。
 途中、恰幅のいい中年女性と散歩している犬とすれ違った。かなりの大型犬だ。犬がエクシアに威嚇のほえ声を立てる。
「あらあら、ごめんなさいね。うちのわんちゃんは猫が嫌いなのよ」
 中年女性はそう言う。
 刹那は頭を下げると、無言でエクシアを抱き上げた。中年女性と大型犬が通り過ぎる。エクシアは刹那の腕の中でみゃあみゃあ鳴きながら震えていた。大型犬がよほど怖かったのだろう。
「よしよし。もう大丈夫だ」
 そう言うと、刹那はエクシアを腕から下ろした。大型の車も多く通っている国道に出た。刹那はエクシアが車に轢かれないよう、首輪を持ってエクシアを抱き上げた。
 信号が青になる。刹那は横断歩道を渡って公園に向かった。
 公園には思い思いに犬を散歩させている人や、キャッチボールをしている小学生らしき集団、デートの途中の休憩なのか、ベンチで手をつないでいるカップルなどがいた。
 刹那もエクシアを連れてベンチに腰かけた。
 ポケットに入れていたおやつ用のキャットフードを取り出し、ひとつひとつエクシアに与える。
 エクシアはみゃあと鳴くと、美味しそうにキャットフードを食べ始めた。
 刹那は公園に生えていた雑草を引き抜くと、エクシアの体をくすぐるようにかざしてみた。案の定、エクシアは草と戯れるのに夢中になった。
 みゃあみゃあ鳴き、草を追いかける。今度ペットショップで子猫のおもちゃを買おうと刹那は思った。
「今日は風呂にも入れてやるからな、エクシア」
 刹那がエクシアに言い聞かせるように言う。一般的に、猫は風呂を嫌うが、エクシアは別だった。風呂が大好きで、刹那がシャワーを浴びている時も勝手に入ってきては刹那にすり寄る。
 心配なのはミッションで長くマンションを開けなければならない時だ。いっそのこと、ミッションの最中にもガンダムエクシアのコクピットに同乗させようかとも思う。
 それほど刹那は子猫のエクシアに入れ込んでいた。
 その時、携帯端末が鳴った。刹那は急いでスイッチを入れる。相手はロックオンだった。
「刹那か? 明日からミッションだ。今日中にトレミーへ戻って来い」
「エクシアも連れて行っていいか? 1匹だけ置いておけない」
「まあ、そう言うなら。餌も充分用意してこいよ」
「ああ、判った」
 そう言うと刹那は携帯端末を切った。
「エクシア、今日の夜から宇宙だぞ。トレミーの皆にお前を紹介するからな」
 みゃあとエクシアが鳴く。本当に刹那の言っていることが判るかのようだ。
 刹那はエクシアを連れてマンションに帰ると、宇宙へ向かう準備を始めた。エクシアを入れる籠はもう買ってある。念のため、餌を一週間分用意して、刹那はマンションを出た。
 そして軌道エレベーターまで向かうと、猫の検疫を受ける。幸い一発でクリアした。
 そして刹那と子猫のエクシアはトレミーへ向かって飛び立つのだった。

FIN

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