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2008年8月30日 (土)

ティエロクSS

18934119_1781606918  ティエリアは物思いに耽っていた。
 ちらちらと頭の中を支配するのはロックオン・ストラトスという男のこと。
 なぜロックオンのことが気になるのか、ティエリアには判らなかった。
 それが俗に言う「片思い」だということに、恋愛経験皆無のティエリアには判っていなかった。
 昼食の時間になったので、トレミーの食堂へ向かう。
 そこにはロックオンがいた。
 ティエリアの心臓がとくんと一跳ねする。
「よう、ティエリア」
 ロックオンが声をかけてくる。
 とくん。
 また心臓の鼓動が高鳴った。
「な、何か用か? ロックオン・ストラトス」
 ティエリアがぎこちなく言い返す。
「ただの挨拶だよ。あまりかしこまるなよ」
 ロックオンに言われ、ティエリアは緊張を解いた。
 パイロット食のトレーを持つと、ロックオンの向かいの席に座る。
 内心ティエリアはドキドキしていた。
 2人無言で食事を始める。
 その間も、ティエリアはロックオンのことが気になって仕方がなかった。
「俺の顔に何かついているのか?」
 不意に尋ねられ、ティエリアは食事も忘れてロックオンの顔を見つめていたことに改めて気づく。
「いや、何でもない」
 そう答えるが、ティエリアは食事がのどを通らなかった。大分残っている食事をダストシュートに放り込む。
「おいおい、それしか食わねえのか?」
「食欲がない」
 ティエリアはそう答えると食堂を後にした。
 ヴェーダの部屋へ向かう。
 そこはティエリアが唯一落ち着いていられるところだった。
 ティエリアは第7レベルの情報まで潜っていく。
 そこにはガンダムマイスターの本名などが記載されていた。
「ニール・ディランディ……」
 ティエリアが呟く。
 これがロックオンの本名か。
 ティエリアは再びドキドキするのを感じていた。
 なぜ彼のことを考えると胸がドキドキして痛くなるのだろう。
 ティエリアはヴェーダの部屋から出ると、自室のベッドに横になった。
 枕を抱える。
「ロックオン……いや、ニール……」
 名を呟くだけで頬が赤くなる。
 ティエリアがその意味を知ることになるのはかなり後のこととなる。

FIN

2008年8月26日 (火)

スパロボMX ヒューゴ&アクアSS

 ヒューゴは悩んでいた。すでに自分の体が半分サイボーグなことは、もうマグネイト・テンの皆にカミングアウトしてある。カミングアウトしたというより、知られてしまったという意味合いの方が大きいが。
 ヒューゴが悩んでいるのは、自分の体のことで、他の皆が余計な心配をして今後出撃させてもらえないかも知れないということだった。
「ヒューゴ。いるんでしょ? 入るわよ」
 そう言い、アクアがヒューゴの私室に入ってきた。
「最初みんな驚いていたけれど、今は落ち着いているみたい。心配しなくていいわよ、ヒューゴ」
 アクアはヒューゴの悩みを察していた。年上として、パートナーとして。そして何より、ヒューゴに対して憎からぬ想いを胸に秘めているアクアならではの言葉だった。
「そうか。今はザパトのくれた新しい薬もうまく馴染んでいる。今までのように、戦闘中いきなり手足が動かなくなるなんてことはないだろう」
 ヒューゴが答える。
「だから今までどおり戦いましょう。アルベロ・エストやミッテ先生が何を考えているか判らないけれど、私たちは結果を出さなくてはならないのだから」
 ヒューゴにとって、アルベロと戦うことは何に代えても辛いことだった。それはアクアも同じだ。アクアの恩師であるエルデ・ミッテがアルベロと行動を共にしていたと知った時は動揺し、戦えなかった。
 でも今はそんなことを言っている場合ではない。
 二人は完成した新しい機体、サーベラス・イグナイトの元へ向かった。
 複座式で、変形することによって、近距離戦、遠距離線、どちらにも対応できる機体だ。近距離戦はヒューゴが、遠距離戦はアクアが担当する。
 今までのように、サーベラスのTEアブゾーバーが不安定になることはない。
 そう、これは完成機なのだ。
 ザパトが最も望んだ形の。彼の企みがどうであれ、ヒューゴとアクアは、サーベラス・イグナイトを入手したことを素直に喜んでいた。
 格納庫の2人の元へ、甲児がやってきた。
「よう、ヒューゴ、アクア。もう大丈夫なのか?」
「ああ。おかげさまでな」
「これからは私も戦うわ」
 甲児は驚いた顔になる。
「アクアさんも戦うのか? ヒューゴだけじゃなくて」
「サーベラス・イグナイトは変形することによって、近距離戦、遠距離戦の2つのモードを持っているの。ヒューゴが近距離戦、私が遠距離戦を担当することになったわ」
「そうなのか」
 そこへ北斗、銀河も顔を出した。
「ヒューゴさん、寝ていなくて大丈夫なんですか?」
「アクアさんも戦うって本当かよ」
 2人が問う。
「ええ、本当よ。ヒューゴも今はすっかり落ち着いているわ。心配してくれて有難う」
 アクアが答える。
 ヒューゴは黙ってサーベラス・イグナイトを見上げていた。
(アルベロ……あんたが何を考えているのか俺にはまだ判らない。けれど負けはしない)
 ヒューゴはアクアと共に、再び戦う決意を新たにするのだった。

FIN

2008年8月24日 (日)

ロク刹SS 成人向け

18934119_3962935364  ロックオンは恋人である刹那を誘って、経済特区・東京のお台場に来ていた。東京でも指折りの人気スポットだけに、平日だというのに観光客も多い。
 そこに綺麗だと有名なプラネタリウムがあるという。
 ロックオンはそこへ刹那を連れていくつもりだった。
 いつも宇宙で星を見ているが、それとは違った感覚で見るのも楽しいだろう。
「刹那、プラネタリウムに行くがいいか?」
「ああ」
 ロックオンに買って貰ったソフトクリームを舐めながら刹那が答える。
 やがて2人はプラネタリウムの入口へ着いた。
 ここも人気スポットらしく、行列が出来ていた。
 ロックオンと刹那はその最後尾に並ぶ。
 30分ほど待ち、ロックオンと刹那はプラネタリウムの中へ入った。
 係員がチケットをチェックし、2人は中央のいい席へ座った。
 あたりが暗くなる。
 ロックオンはそっと刹那の手を握った。
 刹那もロックオンの手を握り返す。
 2人の恋人は、時が経つのも忘れて、一時の宇宙体験を楽しんだ。
「どうだ、刹那。たまにはこういうのもいいだろう?」
「ああ、楽しかった、有難う、ロックオン」
 刹那が答える。
「水臭い礼なんかいいって。俺達の仲なんだから」
 プラネタリウムから出て、二人は次にどこに行こうか話し合った。
 取りあえずロックオンの車に乗る。
 あてもなく車を走らせ、海岸に出ると、ロックオンはそこで車を止めた。
 外は寒い。今日本は秋の終りだった。
 ロックオンは助手席に座っている刹那に声をかけようとした。
 だが刹那は静かに眠っていた。
 疲れが出たのだろう。無理もない。今日の休暇も無理を言って取らせてもらったのだ。
 ロックオンは刹那を起こさないように、そっと彼の頬に唇を寄せると、小さなキスをした。
 こうしている刹那は本当に可愛い。
 いっそここで襲ってしまいたい。
 ロックオンはその衝動を抑えた。
 やがて刹那が目を覚ました。
「う……ん」
「起きたか、刹那」
「ロックオン。俺、寝てしまったのか」
「ああ。よく寝ていたぜ」
 ロックオンの笑顔に、刹那は急にこみあげてくる思いを抑えられず、ロックオンに抱きついた。
「お、おい、刹那」
 ロックオンは一瞬驚くが、すぐに刹那の細い体を抱き締めてやった。刹那がロックオンの唇に己のものを重ねる。
 ロックオンもそれに応えた。長い濃厚なキスを交わす。
 唇を離すと、2人の唇の間には、キスの証である唾液の橋が出来ていた。
「刹那、ここでしたい。いいか?」
「……」
 刹那は真っ赤になりながら頷いた。
 ロックオンの手が、手際よく刹那の衣服を脱がせてゆく。
 そして少年の素肌にそっと手を這わした。
 刹那の体がぴくんと跳ねる。
「あ……ああっ!」
 助手席のシートを倒し、ロックオンは刹那の上にまたがった。
 首筋に舌を這わせ、耳元に息を吹きかける。
 それだけで刹那は感じているようだった。
 ロックオンは半分はだけた刹那の上半身を唇と舌で徹底的に愛撫した。
 胸の突起に舌と指を使って快楽を与える。
「あんっ! ああっ、はっ!」
 ロックオンは自らの股間に、刹那の熱く硬くなったものが押しあてられるのを感じた。
「いかせてやるよ、刹那」
 そう言うと、ロックオンは刹那の下半身の戒めとなっていたズボンのチャックを開き、そっともう十分硬くなっている刹那自身を取り出した。そして長い指でそれを愛撫する。車の中なので、舌を使っての愛撫は不可能だったが、それでも良かった。
 刹那は激しく荒い息を漏らし、ロックオンの愛撫に喘ぎを漏らし続ける。
 やがて刹那は絶頂を迎えた。
 たっぷりと白濁したどろりとした液を漏らす。
 ロックオンは手に着いたそれを丁寧に舐め、ティッシュで刹那を綺麗にすると、今度は自身のジーンズのチャックを開けた。
 刹那が体を後ろにずらす。そしてロックオンは刹那のズボンを完全に脱がし、下着も剥ぎ取り、己自身を刹那の秘所に押し当てると、ゆっくりと刹那の中へ入って行った。
 刹那が一瞬、苦悶の声を漏らす。だがそれも一瞬のことだ。
 ロックオンが腰を動かし始めると、とたんに痛みがウソのように消えた。
 そして甘い吐息が刹那の口から漏れ出る。刹那はロックオンの与えてくれる快楽に、気が狂いそうになっていた。
 ロックオンは何度も刹那の中に、入れては抜き、入れては抜くという行為を繰り返した。
「刹那……おまえのここ、すごく締まりがよくて気持ちいいぜ」
「あんっ……ろ、ロックオン……もっと! もっと奥まで……!」
 刹那が哀願する。ロックオンはそれに応えた。ぐっと刹那の腰を引きよせ、己自身を刹那の最奥まで突き入れた。
「ああああ!」
「せ、刹那。いきそうだ」
「俺も……」
 切なげな喘ぎが車内に響く。
 ロックオンはより一層腰を強く動かし、やがて絶頂に達した。同時に刹那も再び絶頂を迎える。ロックオンは刹那の中に熱いものをたっぷりと吐き出した。

 1時間後。
 ロックオンは身なりを整えた刹那の元へ、自動販売機で買った飲み物を持ってきた。
「有難う」
「俺も喉が渇いたからな」
 2人は車内でゆっくりと喉の渇きを癒した。
「次、どこ行きたい?」
「ロックオンの連れて行ってくれるところならどこへでも」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」
 ロックオンは刹那の髪をくしゃりと撫でた。
 そして車を発車させた。
 次はどこへ行こう。
 そうして2人の恋人のデートは過ぎてゆくのだった。

FIN

2008年8月22日 (金)

サイバーフォーミュラZERO SS続き

15740266_3045593214  風見ハヤトは、ゼロの領域で走り、ランドルのイシュザークと接触事故を起こし、瀕死の重傷を負ったことがトラウマとなり、サイバーのレース中でもブーストのレバーが引けないでいた。
 サイバーのレースでブーストが使用できないことは、上位をまったく狙えないということになる。ハヤトの体はもうすっかり治っているのに、どうしてもブーストのレバーが引けない。いざという時に腕が動かなくなるのだ。
 医師にも診てもらったが、原因は精神的なものだと診断された。
 そのため、アナウンサー曰く、「帰ってきたユニコーン」ことハヤトもすっかり精彩を失い、6位までに入賞するのがやっとというレースが続いた。
 予選でもいいタイムが出せない。そんなハヤトを、スゴウグランプリ所属の若手ドライバー、アンリ・クレイトーは小馬鹿にしていた。態度には出さないが。
 アンリの夢は、14歳でサイバーにデビューし、父の望んだ史上最年少のチャンピオンになることだった。だがアンリが12歳の時、14歳のハヤトが優勝し、史上最年少チャンプとなってしまってから、父に見捨てられ、その反動でハヤトを殺したいと思うまでに憎むようになったのだ。
 ハヤトはその事情を知らない。だからこそ、ゼロの領域に踏み込むと聞こえてくるアンリの呪詛の声が理解できなかった。
 あすかはいくら連絡しても電話にも手紙にも返事をくれない。当たり前だ。ハヤトが重傷を負い、死ぬほど心配させて、婚約した挙句、裏切ってサイバーの世界に戻ってしまったハヤトだ。あすかはそれが許せなかった。
 だからこそ、ハヤトの情報はなるべく聞かないようにしていた。
 ところが、ある日みきがあすかを訪ねてきた。
 今、スゴウウィナーズは日本に帰ってきており、3日後に再び日本を発つという。
 みきは新条との仲がぎくしゃくしており(これもアンリが仕組んだことだが)、憂さ晴らしのショッピングのついでにあすかの元を訪れたのだ。
 そこで初めてあすかはハヤトの事情を聞かされた。みきはあすかに戻るよう懇願したが、あすかはそれを拒否した。

 数日後。
 あすかはオーストリアグランプリに日本から、誰にも言わずに旅立った。みきの言葉が引っ掛かったのと、ハヤトが苦しんでいると言われたことで、いてもたってもいられなくなったのだ。だがあすかは帰ろうとした。それを見つけたクレアが、ピットパスをあすかに渡し、自分もナイト・シューマッハこと菅生修のことで同じような経験があることを話した。
 そしてあすかは決意した。
 ピットパスをスタッフに見せ、順位を落としているレース中のスゴウウィナーズのピットへ向かう。
 ペイから通信機を渡されたあすかは、ハヤトに呼びかけた。
 ハヤトが驚く。胸にペンダントとして飾っている婚約指輪が光ったような気がした。
「ハヤト、どうしたの。たかがレバーを引く、そんなことができないなんて嘘よ。でも今、私の力が必要なら、一緒にレバーを引くわ」
「あすか……」
「オーディーンカーブの手前。3つ数えるわ」
 ハヤトはアスラーダ11のコクピットで小さく頷いた。
「3」
 あすかが通信機に向かってつぶやく。
「2」
「1」
「ブースト・オン!」
 ハヤトの腕が奇跡的に動いた。まるであすかの言葉が届いたかのように。
 アスラーダ11を抜き去ったばかりのグーデリアンとハイネルは驚いた。
「ブーストか!」
「生きていたのか!」
 アスラーダ11はどんどん順位を上げていく。もう何も怖くない。あすかがいてくれるなら、それだけで。
 そしてハヤトは初めて表彰台に上がる結果を残した。
 レース後、ピットでハヤトがあすかに頭を下げる。そして婚約指輪をあすかに返した。だがあすかはその指輪を左手の薬指ではなく右手の薬指にはめた。
「虫がよすぎるわよ、ハヤト。あれはあれ。これはこれ」
 そう言うと、あすかは何かすっきりしたような表情を見せた。
 こうして、ハヤトとあすかは無事仲直りしたのだった。

FIN

2008年8月21日 (木)

アレティエSS

18934119_3052339739  アレルヤは初めて会ったときから、ティエリアのことが好きだった。いや、正確には一目ぼれというのが正しいかも知れない。17歳の時に初めてトレミーへやってきて、そこでスメラギにティエリアを紹介され、その美少女とみまごうばかりの容貌に一目ぼれしたのだ。
 だがアレルヤはシャイな性格で、なかなかティエリアに想いを伝えることができないでいた。誕生日にプレゼントを贈ろうにも、彼はその日すら教えてはくれなかった。
 だからアレルヤは地球で言うホワイトデーに、ティエリアに手作りのクッキーをプレゼントした。
 ティエリアは何のことだか判らず、
「どういうつもりだ? アレルヤ・ハプティズム」
 とにべもなく言うだけだった。
「気にしないで。ただプレゼントしたかっただけだから」
 アレルヤはそう言い、カードを読んでくれるだろうかとドキドキしながら自室へ戻った。
 カードにはティエリアへの想いが書いてある。
 アレルヤはそれを思い切ってプレゼントしたのだ。

 翌日。
 ティエリアがアレルヤの部屋を訪れた。
「アレルヤ・ハプティズム、いるか?」
「ああ。いま開けるよ、ティエリア」
 アレルヤはインターフォン越しのティエリアの声に、内心ドキドキぢながら扉のロックを外した。
 ティエリアが部屋へ入ってくる。
 後ろ手に何か持っているようだ。
「どうしたの? ティエリア」
 アレルヤが問う。
 ティエリアは後ろ手に持っていたものを差し出した。
 それはチョコレートだった。
「1か月遅れだが、バレンタインのチョコレートだ」
「え?」
 アレルヤが驚く。
「地球ではこういう習慣があるんだろう? 好きな相手にバレンタインやホワイトデーにプレゼントを贈りあうという」
 ティエリアが言う。
「そうだけど」
「だから持ってきたんだ。1か月遅れで済まない。受け取ってくれるか? アレルヤ・ハプティズム」
 アレルヤは笑顔になった。
「これからはただのアレルヤでいいよ」
 そう言い、プレゼントのチョコレートを大事そうに受け取る。
 そしてアレルヤはティエリアへ近づき、そっと抱きしめた。
「好きだよ、ティエリア」
「アレルヤ……」
 ティエリアもおずおずとアレルヤの抱擁に応える。
「ゆっくり時間をかけて、お互いのことを判りあっていこう、ティエリア」
「ああ」
 ティエリアはアレルヤのたくましい腕の中で頷く。
 二人は名残惜しげに体を離した。
「今度地球へ二人で行こう」
「ああ。楽しみにしている」
 ティエリアはそう言い、自室へ戻って行った。
 アレルヤはその後ろ姿をいつまでも見送っていたのだった。手にはチョコレートを持って。

FIN

2008年8月19日 (火)

ロク刹SS

1219145422820165  刹那は季節はずれのバレンタインプレゼントとして、小さなハムスターを買った。ロックオンへのプレゼントだ。彼は意外に動物好きで、以前デートで行った動物園でもいろんな動物と戯れるのがとても楽しそうだった。
 刹那はそれを覚えていて、ロックオンにトレミーでも飼える小動物をプレゼントしようと思ったのだ。バレンタインの習慣については、育ちが育ちだったのでほとんど知らなかった。
 ハムスターを檻に入れ、餌のひまわりの種を添えると、刹那はそれを丁寧にラッピングし、がさごそ音がするそれを持って、ロックオンの部屋を訪ねた。
 インターフォンを鳴らす。
 ロックオンがすぐに対応に出た。
「刹那か、どうした?」
「ちょっと、渡したいものがあって」
 刹那は多少はみかみながら言う。
 ロックオンは扉のロックを開けた。
「開けたぜ、入ってこいよ」
「ああ」
 刹那はロックオンの部屋に入り、彼に後ろ手に持っていたハムスターの檻を差し出した。
「?」
「ロックオン、好きだろう? こういうの」
 ロックオンは包みを開いた。愛らしいハムスターの姿を見て、ロックオンが嬉しそうな顔になる。
「どうして今日俺に?」
「バレンタインに渡し損ねたからだ」
「バレンタイン?」
「好きな人にプレゼントをする日だろう? 俺、詳しいこと何も知らなかったから」
「刹那」
 ロックオンはそう言うと、ハムスターの檻を置くと刹那を抱き寄せた。
 刹那もその抱擁に応える。
 二人は固く抱き合った。
 そしてロックオンが刹那の顎を指で持ち上げ、そっと優しいキスをする。
 刹那もつま先立ちしてロックオンの唇に己のものを重ねた。
「有難う、刹那。大事にする」
「喜んでくれて嬉しい。ロックオン」
 そう言い、二人は名残惜しげに体を離した。
 ロックオンがハムスターを見つめる。
「名前、どうしようかな」
 暫し考えたあと、ロックオンはこう言った。
「そうだ、ニールにしよう」
「ニール?」
 刹那には意味が判らなかったが、それはロックオンの本名だった。
「こいつの餌はひまわりの種でいいんだろう?」
「ああ。店員が言っていた」
「可愛いな」
「本当に」
「お前もだよ」
 刹那はその言葉に頬を染めた。
 もう一度、ロックオンは刹那を抱き寄せた。扉にロックをかける。
 そして刹那を抱き上げると、ベッドへといざなうのだった。

FIN

2008年8月18日 (月)

刹那 セカンドシーズン妄想SS

18934119  刹那はひとり、旅をしていた。ソレスタルビーイングの最後の戦いから1年が経とうとしている。
 自分たちの戦いが正しかったのかどうか、それを確かめるために、刹那は地球のあちこちを旅していた。
 途中、アイルランドに立ち寄った。以前、生前のロックオンが連れて行ってくれた喫茶店などが静かに佇んでいる。刹那は花屋で花を買うと、ロックオンの家族が眠る墓地へ向かった。
 そこは静かな場所だった。緑が多く、鳥たちのさえずりが聞こえてくる。ディランディ家の墓を見つける。
 ここにも以前、ロックオンは連れて行ってくれた。
 墓石に名前はないし、遺品もないが、刹那はここにロックオンの魂が導かれますようにと、花を供え、祈りをささげた。
 膝を折り、目を閉じて長い祈りをささげる。
 ロックオン・ストラトス……、いや、ニール・ディランディ。
「静かに眠ってくれ、ロックオン。俺は旅を続ける」
 刹那はそう言うと、墓石を後にした。
 ソレスタルビーイングは事実上壊滅状態だった。宇宙で細々と活動しているのはイアンとフェルト、イアンの娘のミレイユ、そして重傷を負いながらも奇跡的に生きていたラッセだった。ティエリアは刹那と同じく助けられ、一人ガンダムマイスターとして新たな道を模索している。スメラギはソレスタルビーイングから去っていった。
 責任を取ったわけではない。彼女なりに思うところがあったのだろう。
 だから、スメラギが「ソレスタルビーイングをやめる」と言ったときも反対しなかった。
 今、彼女がどうしているかは判らない。
 ひょっこり旅の途中で出会うこともあるかもしれない。
 刹那はふっと微笑んだ。
 ゴーグルをつけ、バイクにまたがる。
 もう21歳になった刹那は立派な大人だった。
 アレルヤは行方不明だった。捕まったのかもしれない。でもアレルヤのことだ。いつか、いつもどおり柔和な笑みを浮かべて戻ってくるだろう。
 刹那は次の地へ向かって旅立つためにバイクのエンジンを吹かせた。
 ブロロロと音がする。
 刹那はアイルランドの次はロシアを訪れようと思っていた。元人類革新連盟の一員だった国だ。アレルヤについて何か情報が得られるかもしれない。
 刹那はそうして1年近く旅をしていた。アザディスタンにも寄った。マリナ・イスマイールは相変わらず国を立て直そうと必死に奔走していた。
 刹那には何もできない。だから敢えてマリナには顔を見せず去った。
 刹那はバイクをロシア方面へ向かわせた。
 寒さが刹那の肌を刺す。
 刹那はバイクを止めると、背負っていたリュックから厚手の上着を取り出した。
 改めてそれを着ると、リュックをバイクの後部座席にくくりつけ、落ちないよう固定すると、再びバイクを走らせるのだった。

FIN

2008年8月15日 (金)

ロックオンSS

18934119_3069126867  ロックオンはふと思った。皆はマイスターのリーダーだといろいろ頼ってくるけれど、本当のところどうなんだろうと。ティエリアなどは小馬鹿にした態度を崩さない。刹那はつんつんしているし、自然に頼ってくるのはアレルヤくらいだ。
 ロックオンはティエリアを呼び出した。
「何の用だ、ロックオン・ストラトス」
 相変わらずの態度だ。それにもすっかり慣れたが。ロックオンは小さな溜息をつくと切り出した。
「ティエリア、お前、俺のことまともなリーダーだと思っていないだろう」
「別にそんなことはない」
「じゃあ何でいつも小馬鹿にした態度を取るんだよ」
 ティエリアは意外なことを言われた顔をした。
「そうだったか?」
「そうだよ」
「それは……済まない」
 珍しくティエリアが謝る。ロックオンはまさかこんなに素直にティエリアが謝るとは思っていなかったので逆に驚いた。
「いや、俺も言いすぎた。済まない」
「これからは気をつける。これでいいか?」
「ああ」
 ロックオンはそう答え、ティエリアはブリーフィングルームを後にした。
 刹那はまだ子供だし、どうやらレジスタンスをしていた孤児のようなので、人との付き合い方が判らないのだろう。だから敢えて刹那は呼び出さなかった。
 そこへアレルヤがやってきた。手にコーヒーのカップを二つ持っている。
「ティエリアから聞いたよ。ここにいるって」
「アレルヤか」
 ロックオンはアレルヤが持ってきたコーヒーを受け取る。
 少し苦い感触のそれを一口すすり、ロックオンはアレルヤに問う。
「俺、本当にガンダムマイスターのリーダーがやっていけるのかなぁ」
「ロックオン、あまり気にしない方がいいよ」
 アレルヤが言う。
「僕はちゃんとリーダーをやっていると思うよ」
「そうかな……なんか自信がない」
「ティエリアは判ってくれたんだろう?」
「ああ」
「刹那は子供なだけだよ。内心ではちゃんとリーダーだと思っているよ」
 アレルヤの言葉に、ロックオンは多少気が楽になった。
「有難う、アレルヤ」
「どういたしまして。じゃ、僕も失礼するよ」
 そう言い、アレルヤも自室へ戻って行った。
 ロックオンはブリーフィングルームの窓から見えるガンダム格納庫を見つめる。
 4機のガンダムが静かに立っていた。

FIN

2008年8月13日 (水)

ロク刹SS

18934119_635553242

 ロックオンは刹那を誘ってアイルランドを訪れていた。

 ここはロックオンが生まれ育った場所。家族との大切な思い出がたくさん詰まっている場所だった。

 ロックオンは花屋で花を買い、刹那を連れて墓地へ行った。

「ここは?」

「俺の家族が眠っている場所だよ」

 刹那の問いにロックオンが答える。

 ロックオンはそっと、ディランディ家の墓へ花を手向けた。

 そして首に掛けてあるロザリオを取り出し、ぎゅっと握りしめる。

「家族の形見か?」

「ああ。写真とおふくろにもらったこのロザリオしか残っていない」

 ロックオンは遠くの山を見つめた。自然が一杯で綺麗な墓地だ。鳥たちのさえずりが聞こえてくる。

「ロックオン」

「何だ?」

「俺も祈っていいか?」

 刹那の思いがけない申し出に、ロックオンは薄く微笑むと、「いいぜ」と答えた。

 刹那が墓石の前に片膝をつき、目を閉じて祈りを捧げる。

「天国の親父やおふくろ、妹も喜んでくれるさ」

「妹がいたのか」

 ロックオンが答える。

「ああ。まだ幼くてな。可愛い妹だった。生きていたらフェルトと同じくらいの年だな」

「そうなのか」

 ロックオンは黙って頷いた。

「湿っぽい話は苦手でね。場所を変えて何か話そうぜ」

「ああ。構わない」

 ロックオンは刹那をレンタカーの助手席に乗せると、アイルランドの町中の喫茶店へ向かった。

 刹那とともに店に入る。ここはロックオンが幼い頃、家族によく連れてきてもらった店だった。

「刹那、ここのココアは絶品だぞ」

「じゃあそれにする」

「俺もだ。奢るから金の心配はしなくていい」

「いいのか?」

「ああ。家族のために祈ってくれたお礼だ」

 ロックオンはそう言い、ウエイトレスを呼ぶと、ココアを2つ注文した。

 やがてテーブルにココアが運ばれてくる。

 刹那はそれを一口飲み、「美味しい」と素直に答えた。

「そうだろう?」

 ロックオンもココアを一口飲む。

「何でお前を連れてきたか判るか?」

「え?」

 鈍い刹那はロックオンの意図することが判らなかった。

「お前、デートしたことないだろう」

「当たり前だ」

「デートだよ」

「え?」

 またしてもきょとんとなる刹那。

 ロックオンは再び薄い微笑みを浮かべた。

「好きな相手じゃなきゃ、家族になんか会わせはしない」

「ろ、ロックオン」

 刹那は真っ赤になった。

「俺じゃ嫌か?」

「そんなことはない。俺は恋愛なんてしたことないから勝手が判らないだけだ」

「これからゆっくり時間をかければ判るさ」

 ロックオンは刹那の手を取ると、その甲に軽く口づけした。

 刹那は再び真っ赤になる。

 こうして2人の静かで穏やかなデートは過ぎてゆくのだった。

FIN

2008年8月12日 (火)

ロックオンSS

18934119_722807994

  バターン!
 派手な音を立ててロックオンが倒れた。
 その場にいた刹那、アレルヤ、ティエリアは驚いて駆け寄る。
「うにゃ……頭いてー」
「どうしたんだ、ロックオン」
 ロックオンは気分悪そうに頭を振った。
「夕べ飲みすぎた……」
 ただの二日酔いの酷いものらしい。
 3人はなんだ、という表情になると、彼等が集まっていたブリーフィングルームのソファーにロックオンを運んで寝かせた。
「水持ってくる」
 アレルヤが食堂の方へ向かう。
 ティエリアは興味無さそうに、
「体調管理がなっていない」
 というと、ブリーフィングルームから自室へ向かってしまった。
 残ったのは刹那一人。
「ロックオン、何でそんなになるまで飲んだんだ?」
「妙に気分が悪かったんだよ。あのトリニティのせいで」
「ああ、そうか」
 刹那は納得したような表情になった。
「夕べはちゃんと寝たのか?」
「いや、朝まで飲んでいた」
「だからあんな倒れ方したんだ」
 ロックオンはバツの悪そうな表情になる。
「頭いてー」
「自業自得だ」
 その時、アレルヤが食堂から水の入ったコップを持って帰ってきた。
「ロックオン、水持ってきたよ」
「すまねぇ、アレルヤ」
 そう言うと、ロックオンはのろのろ身を起こし、アレルヤから受け取った水を飲んだ。
「どうだ? 少しは楽になったか?」
「まあな」
 ロックオンは上半身を起こす。
 そしてソファーに深く腰掛けた。
 ミッションがなくて幸いだった。マイスターのリーダーがこれではたまったものではない。
「じゃあ、俺も部屋に戻る。アレルヤ、後は任せていいか?」
「大丈夫だよ、刹那」
「判った」
 刹那はブリーフィングルームを出て行った。
 アレルヤはロックオンの隣に腰掛け、彼の様子をうかがう。
 幸い、ただの二日酔いのちょっと酷いものらしかった。数時間で回復するだろう。
「ロックオン、もう少し横になっていたら?」
「いや、このほうがいい」
 ロックオンはアレルヤの肩にもたれかかった。
 ロックオンのぬくもりがアレルヤに伝わる。
 そうして二人は長いことそうしていたのだった。

FIN

2008年8月11日 (月)

サイバーフォーミュラZERO SS

15740266_3129202231  ハヤトはあすかと約束していた。
 もうレースはやめる。そして将来あすかと結婚すると。
 ゼロの領域で走り、瀕死の重傷を負ったハヤトが出した答えがそれだ。
 だがハヤトは約束を裏切ってしまった。
 どうしてもレースが忘れられず、あすかに相談もしないで勝手にサイバーの世界へ戻ることを決めたのだ。
 だがすでにスゴウグランプリには、アンリ・クレイトーという若いドライバーがシートを取っている。ハヤトはセカンドチームのスゴウウィナーズの一員として復帰することがいまやスゴウのオーナーとなった菅生修に認められた。
 早速ガレージへ向かう。
 そこには大破したとはとても思えないほどきれいに仕上がっているアスラーダ11があった。
 ハヤトは涙を浮かべてそのシートに座る。
 するとアスラーダが反応した。
「誰だ」
「僕だよ、アスラーダ」
 アスラーダがボイスレコーダーとハヤトの瞳の虹彩を認めて答えてくる。
「私の唯一のレーサー、風見ハヤト」
「うん、アスラーダ」
 ハヤトは目元が熱くなるのが判った。
 そこへみきたちがやってきた。
 懐かしい再会を喜ぶスゴウウィナーズの面々。
 だが、そこに青い顔をしたあすかが現れた。
 あすかは何も言わず、その場から逃げるように立ち去る。
 ハヤトは慌てて後を追った。
「待って、あすか!」
「放して!」
 そう言い、あすかはハヤトを平手打ちした。
「もうあんたなんか知らない!」
 あすかはハヤトがプレゼントした婚約の証の指輪をハヤトに投げつけた。
 そして泣きながら去って行った。
 ハヤトはぶたれた痛みよりも、婚約指輪を投げつけられたショックの方が大きかった。
 それでもレースがしたい。それがハヤトの本音だった。
 ハヤトはあすかを追おうとはせず、ガレージへ戻った。

 そしてサイバーフォーミュラグランプリが始まった。
 ハヤトは懸命に走ったが、もう古いスペックのアスラーダ11ではライバルたちに勝つことはできなかった。
 懸命にやった順位がこれだ。仕方ないと思う。
 しかし、スゴウグランプリのアンリ・クレイトーはハヤトに剥き出しの悪意をぶつけてくる。
 いったい、ハヤトの何が気に入らなくて悪意をぶつけてくるのか。
 それは判らない。
 そしてハヤトはレースの途中、以前の事故を思い出して、ブーストのレバーが引けなくなっていた。
 みるみる内にアスラーダ11が順位を落とす。
 ハヤトは原因も判らないそれに苦しむのだった。

FIN

2008年8月10日 (日)

ロク刹SS

18907003_1338702524  刹那はロックオンと一緒に、久方ぶりのデートに出かけた。
 経済特区・東京の繁華街でウインドウショッピングを楽しむ二人。
 刹那はエクシアと同じカラーリングの青い石が付いているペンダントが気に入った様子だった。
 ロックオンはそうと知ると、刹那とともにそのアクセサリーショップに入った。
「刹那。これ、気に入ったのか?」
「ああ」
 刹那が言葉少なげに答える。
 ロックオンはそのペンダントを手にすると、刹那とともにレジへ向かった。
 代金を支払い、ロックオンは「すぐ使うから包装はいらない」と店員に告げた。
 ロックオンはペンダントを刹那の首にかけてやる。
「いいのか? ロックオン」
 刹那が言う。
「ああ。お前のためならこのくらい軽い出費さ」
 ロックオンはそう答え、店から出た。
 昼食の時間が近かったので、ロックオンは刹那に何を食べたいか尋ねた。
「俺は何でもいいが」
「じゃあ適当に美味そうな店に入るぞ」
「ああ」
 刹那はそう答え、2人は繁華街のはずれにある小さな肉料理店に入った。
 店はかなり狭いが、繁盛しているようで、席は満席に近かった。
 漸く2人分空いている席を見つけると、そのテーブルに向った。
 早速店員がやってくる。
「いらっしゃいませ!」
 ロックオンはメニューを刹那に見せながら、何がいいか尋ねた。
「俺はこのハンバーグがいい」
「そうか。俺は生姜焼きでも頼むかな」
 ロックオンはそう言うと、店員にハンバーグと生姜焼きを頼んだ。
「かしこまりました」
 店員はそう答え、厨房に注文を通した。
 数分後、2人のテーブルに料理が運ばれてきた。
 いい匂いがする。
 早速2人は食事を始めた。
「美味しい……!」
「本当だ」
 肉料理は絶品だった。
 食べ盛りの2人だ。皿はあっという間に空になった。
 ロックオンがもう一度店員を呼び、飲み物を注文する。
 刹那はアイスティーを、ロックオンはコーヒーを頼んだ。
「次、どこ行きたい?」
「ロックオンと一緒なら、どこでも構わない」
 刹那が答える。
「じゃあ動物園にでも行くか?」
「ああ」
 刹那はそう答えた。
 こうして2人のささやかなデートが続くのだった。

FIN

2008年8月 7日 (木)

刹那&子猫SS その4

18934119_1352365746  刹那が子猫のエクシアをトレミーに連れてきて1か月が経った。最初は無重力に慣れなかったエクシアだが、ようやく慣れたようで、無重力ブロックをぱたぱたと尻尾を振りながら漂うのが楽しそうに見えた。生まれてからようやく4か月の子猫であるエクシアはまだまだ小さかった。
 刹那だけでなく、ロックオンやアレルヤ、ティエリアやトレミークルーにもだいぶ慣れたようで、彼等と遊ぶのがとても楽しそうに見えた。猫好きのクリスティナが特にエクシアを構う事が多かった。と、言っても一番慣れているのは刹那だが。
 刹那はエクシアのために、地球へ行っては子猫用の餌をこまめに買っていた。ミッションでもガンダムエクシアのコクピットに同乗させている。最初はイアンのおやっさんに渋い顔をされたが、刹那は頑として譲らなかった。今はもう公認のトレミークルーだ。
 今日はエクシアはフェルトに構ってもらっていた。刹那が地球に餌を買いに行っている間、フェルトに預けられたのだ。クリスティナが悔しがったが、彼女はちょうど任務があって、ブリッジに詰めていなければならなかったのだ。
「はい、ミルク」
 フェルトがエクシアにミルクの入った皿を差し出す。
 エクシアはおとなしく皿を舐めはじめた。
 やがて刹那が子猫用の缶詰を大量に買って、トレミーに戻ってきた。
 早速フェルトの部屋を訪ねる。
「刹那?」
「ああ。そうだ」
 フェルトは扉のロックを外し、刹那に子猫のエクシアを抱いて差し出した。
 刹那が腕にエクシアを抱く。
 みゃあとエクシアが嬉しそうに鳴いた。
 一番大好きなご主人様が帰ってきたのだ。
 そこへ、ロックオンが通りがかった。
「お、刹那。戻ったのか」
「ああ。エクシアの餌を買いに行ってきた」
「イアンのおやっさんが言っていたぞ。今度子猫用のノーマルスーツ作るって」
 刹那は驚いたような表情になった。
「本当か?」
「こんなことで嘘をついても仕方ないだろう」
 確かにロックオンの言う通りだ。
「イアンのおやっさんに礼でも言いに行くんだな」
「ああ」
 刹那はそう答えると、エクシアを抱えたままメンテナンスルームへ向かった。
 予想通り、そこにはメカニックのチェックをしているイアンがいた。
「イアンさん。エクシアのこと、有難うございます」
 イアンは振り返った。
「ああ、刹那か。気にするな。もうその猫はトレミーの立派な一員だ」
 刹那は黙って礼をすると、エクシアを連れて自室に向かった。ちょっと汗をかいた体をシャワーで洗い流す。バスルームにエクシアが入ってきた。
 1人と1匹で仲良くシャワーを浴びる。
 石鹸が目に入ったのか、エクシアがみゃあみゃあ鳴いた。
 刹那はエクシアを抱き上げると、目の部分をシャワーで洗ってやった。
 エクシアが気持ちよさそうにごろごろと喉を鳴らす。
 やがてシャワーを止め、バスローブに着替えると、刹那はエクシアの体をタオルで丁寧に拭ってやった。
 エクシアはふみゃあと鳴く。もう眠いのだ。
 時計を見ると、もう午後10時。刹那はベッドにエクシアを連れて行った。
 刹那自身は待機任務があるので、ブリーフィングルームに行かなければならない。
「おやすみ、エクシア」
 そう言うと、刹那は着替えて部屋を後にした。

FIN

2008年8月 5日 (火)

刹那SS

18716808_1010037792  刹那は先日買った、ガンダム試作3号機ことデンドロビウムのパーフェクトグレードのプラモデル制作にかかっていた。今頃トレミーでもロックオンが同じようなことをしているだろう。
 完成すれば1メートル近くなる巨大プラモデルだけあって、パーツ数は500を超えていた。刹那はそれをニッパーで一つ一つ丁寧に切ると、ガンダムマーカーで裏に番号を書き込んでゆく。番号を書かないと、どれがどのパーツだか判らなくなるからだ。
 デンドロビウム……正確にはガンダム試作3号機ステイメンとオーキスの二つが合体したものである。OVAだけで展開されていた「ガンダム0083」の登場MSだ。この作品は刹那のお気に入りでもあり、同じくロックオンも0083のマニアともいうべきほどのファンだった。
 まずはステイメンの頭部から制作に入る。60分の1だけあって、頭部はかなり精巧に出来ていた。ガンダム最大の特徴である角を折らないように、丁寧にやすりをかけてゆく。
 アイカメラなどは後でちゃんと色をつけるつもりだ。
 昼食の時間になったので、刹那は一時プラモデル制作を中断した。
 キッチンに行き、パスタを茹でる。ミートソースのレトルトを温め、茹であがったパスタにかけた。簡単な昼食だ。
 刹那は冷蔵庫からミルクを取り出すと、それをコップに注いだ。
 テーブルに料理を運び、食事を始める。
 ちょっと暑かったので窓を開けた。気持ちいい風が室内に吹き込んでくる。
 その時、携帯端末が鳴った。刹那はスイッチを入れる。
 相手はロックオンだった。
「よう、刹那」
「ロックオンか」
「デンドロビウムの制作状況はどうだ?」
 刹那はパスタの最後の一口をミルクで流し込むと、ロックオンに向かって答えた。
「今ニッパーでパーツを切り離したところだ。ステイメンの頭部制作にかかっている」
「俺も似たようなところだ」
 ロックオンが答える。
「ミッションは?」
「早くても3日後とのことだ。また連絡する」
 ロックオンはそう言うと携帯端末を切った。
 3日後か……。デンドロビウム完成がまた遅れてしまうな。刹那はそう思い、キッチンで洗い物をすると、再びプラモデル制作に戻った。
 こうしていると年相応の少年と変わりない。
 刹那は何とかステイメンの頭部を完成させると、それを大事そうに箱にしまった。
 次は胴体の制作だ。コアブロックシステムを採用しているそれは結構複雑に出来ていた。
 刹那は取扱い説明書に目をやると、それに従って徐々に組み始めた。
 こうして刹那のひそかな楽しみが進んでいくのだった。

FIN

2008年8月 3日 (日)

刹那&ロックオンSS

18716808_3825106802  刹那はロックオンと会う約束をしていた。以前買ったガンダムエクシアとパーフェクトグレードのZガンダムのプラモデルが完成したので、それを見せるためだ。
 ロックオンも、自分で買っていたガンダムデュナメスとRX-78-2ガンダムのプラモデルが完成したと言っていた。流石に持参してはこないだろうが、また二人でガンプラを買いに行くことにもしていた。刹那はカードに移した電子マネーの残高を確かめる。かなり残っていたので安心だ。ガンダム試作3号機こと、デンドロビウムのパーフェクトグレードが発売されたらしいので、刹那もロックオンもそれを買うつもりだった。
 昼近く、ピンポーンと刹那の部屋のインターフォンが鳴る。
「ロックオンか?」
「ああ。そうだ」
「今開ける。待っていてくれ」
 刹那はそう答えると、マンションのオートロックを外した。
 ロックオンが扉を開けて入ってくる。
「昼食は?」
「外で済まそう。俺の奢りだ」
 ロックオンが言う。
「じゃあ早速見てくれ。パーフェクトグレードのZガンダムと俺のエクシアだ」
 刹那は飾ってあるZガンダムとガンダムエクシアをロックオンに見せる。
 一つ一つのパーツに目いっぱい力を入れたので、モデラー顔負けの出来になっていた。
「すげえな。刹那」
 ロックオンはZガンダムを手に取ると、変形させながら感心したように言う。
「ところで、ガンダム試作3号機のパーフェクトグレードが発売になったようだが」
「ああ。買いに行こう。お前も欲しいだろう?」
「もちろんだ」
 刹那はそう答え、ロックオンと二人、この前行ったプラモデル専門店に行った。
 店内のディスプレイに早速ガンダム試作3号機の素組されたものが飾られている。
 値段は日本円で1万5000円。かなり高額なプラモだ。確かに実際に作ると1メートル近くなるガンダム試作3号機は迫力があった。
 二人は早速ガンダム試作3号機のパーフェクトグレードの箱を手にすると、レジにむかった。
 店主が言う。
「ああ、この前も来てくれたお客さんだね。パーフェクトグレードは完成したのかい?」
「ああ」
「俺もだ」
 2人が答える。
「今日はガンダム試作3号機のパーフェクトグレードを買いに来た」
「そうか、これはお勧めだぞ」
 店主が言う。
 2人は代金を払うと、大きな紙袋を抱えて店から出てきた。
 そのまま近くのオープンカフェへ向かう。
 昼食をとるためだ。
 ロックオンはカレーを、刹那はスパゲティを注文した。
「楽しみだな、デンドロビウムを組むの」
「でも刹那のやり方じゃ、完成までに2カ月はかかるぞ」
「別に構わない」
 ロックオンは苦笑した。
 やがて、2人のテーブルに料理が運ばれてくる。
 2人は午後のひと時を楽しむのだった。

FIN

2008年8月 2日 (土)

アレルヤ&ティエリアSS

17199973_3941957559  アレルヤがティエリアとともに料理を作るようになって1か月が過ぎた。毎日、というわけにはいかないが、ミッションのない日はなるべく2人で昼食を作っていた。
 そして今日もティエリアはアレルヤの部屋を訪ねた。
「アレルヤ・ハプティズム、今日の昼食はどうする?」
 ティエリアの問いにアレルヤが答える。
「今日は暑いからね。といってもトレミーには関係ないけれど」
 そうだ、地球でいうなら、日本は真夏真っ最中。トレミーの中の空調は快適で、日本の特徴である四季などは関係なかった。
「取り敢えず、日本の夏に食べると美味しいとされているそうめんでも作ろうか」
「そうめん?」
「早い話が、冷えたお蕎麦だよ」
 アレルヤの言葉に、ティエリアは納得したような表情を見せた。
「噂に聞く、夏バテとかに効く食事だな」
「そうだよ」
 アレルヤが答える。
「ところで、材料はあるのか?」
「うん。買い置きのそうめんがあるから。それにこれはただ茹でて冷やせばいいだけのものだから、とても簡単だよ」
「そうなのか」
 ティエリアはそう答え、アレルヤとともにキッチンでそうめんを茹でる準備を始めた。
 たっぷりの沸かした湯に、2人分のそうめんを入れる。
 アレルヤは冷蔵庫から氷を取り出していた。
 やがてそうめんが茹であがった。
 ティエリアは用意してあったざるに湯ごとそうめんを流しこむ。
 麺つゆを用意し、まだ熱いそうめんを冷水で冷やす。
 ティエリアは今度は付け合わせのトマトを切り始めた。トマトのへたを取り、以前アレルヤに教わったように丁寧に6つに切る。
 それを皿に盛ると、アレルヤがようやく冷えたそうめんを皿に移し、氷を乗せた。
 これで出来上がりだ。
「本当に簡単な料理だな」
「そうでしょ? さ、食べよう」
 アレルヤがそう言い、二人は食卓についた。
「いただきます」
 やっと箸の使い方に慣れてきたティエリアが、自分の分のそうめんを麺つゆにつけて食べる。
「どう? 美味しい?」
「ああ。美味しい」
 アレルヤはトマトを口にすると、自分もそうめんをすすりはじめた。
 育ち盛りの2人だ。4人分ほど茹でたそうめんは、あっという間になくなった。
「美味しかった」
「それは良かった。今麦茶でも用意するよ」
 アレルヤは再び冷蔵庫から冷えた麦茶のペットボトルを持ってくると、グラスに氷を入れ、2人分の麦茶を注いだ。
「はい、麦茶」
「有難う」
 冷たい麦茶を飲んで、2人は食事を終えた。
 さっそく皿を片づけ、キッチンで洗い物をする。
「明日はミッションがあるから、昼食づくりはできないが、また時間を見つけて教わりに来る」
 ティエリアが言う。
「いつでも大歓迎だよ」
「じゃあ私は部屋に戻る」
「またね、ティエリア」
 アレルヤに見送られ、ティエリアは自分の部屋へ戻っていくのだった。

FIN

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