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2009年4月20日 (月)

ティエリアSS

 ティエリアは、ヴェーダ内でリボンズと対峙したとき、彼に銃で撃たれて、肉体を失った。
 だが彼の意識は死んではいない。
 ヴェーダと一体化し、永遠に地球を見守る守護者の役目に就いたのだ。
 意識が永遠にあることは一種の苦痛だった。しかし、これがティエリアに与えられた試練であり、彼が創り出された本当の目的でもあった。
 誰かに死を与えてほしい。
 長い年月を過ごす間、ティエリアはそう思うようになっていた。
 しかしその願いはかなわない。
 誰もヴェーダに近づけないからだ。ヴェーダ自体も常に移動している。
 肉体があれば死を迎えられるのに……。
 しかし、彼は地球を、平和を見守らなくてはならない。
 だからティエリア、いや、ヴェーダは地球を見守る。
 今日も、明日も、1000年後も。
 時々、仲間たちのことを思い出す。
 変わらない自分を受け入れてくれたCBのメンバーたち。
 自分を導いてくれたロックオン。
 ティエリアがいま一番行きたいところはロックオンのもとだった。
 今のティエリアを見て、ロックオンは何というだろう。
 作りものの自分を笑うか? それとも認めてくれるか?
 それは誰にも判らない。
 今日も静かに時が過ぎてゆく。
 ティエリアはヴェーダの機能をほんの少しシャットダウンした。
 人間でいう、眠りにつくためだ。
 夢でロックオンと会えるだろうか……。
 そう思いながら、ティエリアはひと時の眠りについた。

FIN

2009年4月14日 (火)

刹那&フェルトSS続き

 刹那は約束通り、フェルトを連れてアイルランドの墓地に来た。
 ニール・ディランディことロックオン・ストラトスの墓参りに来たのだ。
「フェルト、ここだ」
「あ……」
 アニューの墓がすぐそばに建っている。
「気にするな」
「うん……」
 フェルトは墓の前にひざまづくと、持ってきた花束を置き、目を閉じて祈り始めた。
「ロックオン……」
 小さくつぶやく。そのつぶやきは天国のニールに届いているだろうか。
「フェルト、そろそろ行こう」
「うん」
 刹那に促され、フェルトは後ろ髪を引かれる思いで墓地を後にした。

 数時間後。
 二人はアイルランドの町中の喫茶店にいた。
 以前ロックオンが刹那を連れてやってきた、ココアが絶品の店だ。
「ここはロックオンがよく来ていた店なんだそうだ。俺も以前連れて行ってもらったことがある」
「そうなんだ」
 刹那はメニューをフェルトに見せた。
「何がいい? 好きなもの頼んでいいぞ。俺が奢るから」
「じゃあ、ココアとチーズケーキにする」
「そうか。俺も同じものを頼もう」
 刹那は店員を呼ぶと、二人分のオーダーを通した。
 ゆったりとした空気が流れる。
 普段寡黙な刹那と、おしゃべりは苦手なフェルトだ。自然と静かな時間が流れてしまう。
 フェルトは思い切って聞いてみた。
「刹那、本当にマリナさんのこと、好きじゃないの?」
「好きとか嫌いとかじゃない。ただ縁があっただけだ」
「そうなんだ……」
 再び沈黙が流れる。
 ……。
 そこへ店員がやってきた。
「お待たせいたしました。ココアお二つとチーズケーキお二つです」
 店員がテーブルの上にココアとチーズケーキを置く。
「食うか」
「うん」
 二人はチーズケーキとココアに手をつけ始めた。
「このココア、本当に美味しい……!」
「だろう? ロックオンが勧めていたんだ、これ」
 フェルトは黙って頷き、ココアを一口すする。
 やがてテーブルに置かれた品は空になった。
「少し長居しよう。ロックオンの思い出話でもするか」
「うん」
 フェルトは嬉しそうに言った。
 そして二人は夕方まで、生前のロックオンがいかに優しくて包容力の大きかった人物か話し合った。
「そろそろトレミーに戻ろう。いい加減長居しすぎた」
「そうだね」
 そう言い、刹那はフェルトをレンタカーの助手席に座らせると、軌道エレベーターまで向かうのだった。

FIN

2009年4月13日 (月)

刹那&フェルトSS

「刹那! 無事だった?」
 最終決戦後、フェルトが帰ってきた刹那に初めて発した言葉がこれだった。
「ああ」
 刹那が短く答える。
 フェルトはほっとしたような顔になった。
「花をなくしてしまった。済まない」
 刹那が謝る。
「そんな、刹那が無事ならそのくらい……」
 そう言ってフェルトは言葉をつまらせた。
 刹那はぽんぽんとフェルトの髪を撫でるように叩く。
「泣くようなことじゃない」
「うん……判ってる」
 だがフェルトの涙は止まらない。
 ぽろぽろと涙を流すフェルトを見て、刹那はそっと彼女の細い体を抱きしめた。
 フェルトもおずおずと刹那の体に腕を回す。
 無重力ブロックだ。二人の体はそっと宙に浮かんだ。
 恋人でもない。友達とも違う。二人は仲間だった。
 仲間だからこそ信頼がある。
 相手を心配できる。
 フェルトの心にはまだニールが残っている。刹那もそれは十分判っている。
 だからこそ、二人は心の隙間をなくすべく抱き合う。
「ねえ、刹那」
「どうした?」
「今度一緒に、ロックオンのお墓参り、行ってくれる?」
 刹那は一瞬逡巡したのち、黙って頷いた。
 二人は体を離す。
「約束よ」
「ああ」
 フェルトはブリッジに戻って行った。
 長めのピンク色の髪がたゆたう。
 刹那はその後ろ姿を黙って見送った。

FIN

2009年4月 5日 (日)

コーラサワー&カティSS

 コーラサワーは言った。
「大佐、今日の朝食は何にしましょう?」
 ベッドルームから着替えて出てきたカティが答える。
「馬鹿者! 私は准将だと何度言えば覚えるんだ、パトリック!」
「すみません、。癖が抜けなくて。で、朝食のリクエストは何かありますか?」
 カティは考え込んだ顔になる。
「そうだな。トーストにフレンチフライ、コーヒー、サラダと言ったところだろうか」
「了解であります。准将」
 そう言い、コーラサワーは鼻歌を歌いながらフライパン片手に調理を始めた。
 これではどっちが妻で、どっちが夫か判らない。
 だがカティは生粋の軍人で、少女時代から軍の予備学校に通っていたこともあり、料理は何一つ作れなかった。
 やがて美味しそうな朝食が出来上がる。
 コーラサワーは不死身以外にも「超一流のコックのコーラサワー」と名乗ってもよいほどの料理の腕前を持っていたのだ。
 早速、新婚ほやほやの二人は、料理を並べたテーブルに着き、朝食をとり始めた。
「どうですか? 准将」
「うん。今日の朝食もよく出来ている」
「今日は2人とも非番です。遊園地か映画でも見に出かけましょう」
「そうだな。家の中でごろごろしていてもつまらないし」
「えー! 俺と一緒にいるの、つまらないですか?」
 カティは慌てたように言う。
「いや、そういう意味じゃない。2人で出かければ楽しみも倍増するだろう」
「そうですよね。じゃ、朝食食べ終わったら早速出かけましょう!」
 コーラサワーが嬉しそうに言った。

 数時間後。
 2人は繁華街の映画館の前にいた。ちょうど恋愛映画が上映されているらしい。
「ここに入りましょう! いいですよね!」
「お、おい。パトリック!」
 コーラサワーは強引にカティの手を取ると、代金を払い、映画館の中へ入って行った。
 売店でポップコーンと飲み物を買い、丁度空いていた真中の席へ座る。
 やがて映画が始まった。
 内容は病弱の少女が担当医に恋し、しかしながらも結ばれずに少女が死んでしまうという悲恋ものだった。
 ラストシーンを見て、コーラサワーが滝のような涙を流している。
「お、おい。パトリック」
 カティはバッグの中からハンカチを取り出してコーラサワーの涙を拭いてやる。
「すみません。俺、こういうのすごく弱いんです……ぐすっ」
「まったく。放っておけん男だな、お前は」
 苦笑しながらカティが言う。
 そして2人は映画館を出た。
「じゃあ昼食に行きましょう」
「そうだな」
 これでは夫婦というより恋人同士だ。
 それでも2人は幸せだった。

FIN

2009年4月 2日 (木)

ガンダム00 セカンドシーズンその後・妄想SS

 戦いは終わった。
 と、言ってもつかの間の平和に過ぎないが。
 それでもトレミーのクルーやCBの仲間たち、ガンダムマイスターたちにひと時の休息が与えられたのは事実だ。
 刹那、ライルはCBに残った。いつまた新たな戦いの火種が生まれるか判らない。今のCBは、地球の紛争や争いを監視する役目を背負っている。
 ティエリアは肉体を失った。
 ヴェーダ内部でリボンズと対峙したとき、撃たれて命を落とした。
 しかし彼の意識は死んではいない。ヴェーダと一体化し、地球を見守る役目についたのだ。
 アレルヤは、ようやく意識が統合されたマリー(ソーマ)とともに、自分が犯した罪を償うための旅に出た。少ない荷物をまとめ、マリーを連れて地球に降り、各地を巡礼して回っている。
 ガンダム4機はほぼ壊滅的なダメージを受けた。一応トレミーに収容し、イアンやリンダが修復に当たっている。いつまたガンダムが必要になるか判らないからだ。
 地球では、新たな平和を目指す地球連合政府と、アザディスタンの皇女、マリナ・イスマイールが中心となって、アザディスタンが復興され、ようやく人々が安心して眠れる日々がやってきた。
 マリナからの手紙を読んだ刹那は、彼なりにマリナの力になりたいと思っていた。と、言っても、ガンダムで武力介入しか出来ない刹那は邪魔な存在かもしれないが。
 一国の皇女と一民間人である刹那では身分に違いがありすぎる。
 だから二人の存在は遠い。
 それでも構わないと刹那は思っていた。今の自分たちにはやることがある。
 だからこれでいいのだと。
 時々、アレルヤからトレミーに連絡が入る。元気なアレルヤとマリーの姿を見て、トレミークルーは安心したような顔になる。
 そして今日もアレルヤから連絡が入った。
 スメラギがミレイナに命じてスクリーンに二人の姿を映させる。
「お元気ですか? 皆さん」
「皆、元気よ。アレルヤ、あなたも元気そうね。旅は順調?」
 スメラギが答える。
「はい。元気です。マリーも」
「お久しぶりです、スメラギさん」
 マリーが挨拶する。
 アレルヤはマリーの手を取ると、ちょっと恥ずかしそうに頬を染めて言った。
「実は、この夏には僕、父親になるんです」
 フェルトやスメラギ、ミレイナが驚いたように振り返った。
「じゃあマリーさん妊娠中?」
「そんな体で旅して大丈夫なの?」
「本当なんですか、ハプティズムさん?」
 恥ずかしげにマリーが答える。
「まだ安定期じゃありませんが、無理をしないようにしていますし、私にはアレルヤがいますから」
 マリーがアレルヤに視線を移す。
「大丈夫です。マリーと僕の大事な子供のことは命に代えても守ります」
「よかったじゃないか、アレルヤ」
「そうだな」
 刹那とライルも言う。
「おめでとう。子供が生まれたら、一度トレミーに顔を出しに来て」
 スメラギが言う。
「もちろんです。僕も皆さんに会えるのを楽しみにしています。それじゃ」
 通信が切れた。まさか一番奥手に見えたアレルヤが……と、皆顔を見合わせる。
「羨ましいな。俺もこういった話がほしいぜ」
「すまないロックオン」
 刹那が謝る。アニューのことを思い出したのだ。
「いいって。謝らなくても。俺は俺でまた新しい出会いを見つけるさ」
 ライルの表情はさばさばしていた。ほっとする刹那。
「お前こそ、マリナ・イスマイールとはどうなんだ?」
「俺と彼女はそんな関係じゃない」
 刹那が断言する。実際、そのとおりだった。
「とにかく、今日はアレルヤのおめでたい話で幸せね。私たち」
 スメラギの言葉に、みな頷く。
「クジョウ。僕たちもそろそろ……」
 ブリッジにやってきたカタギリが言う。
「そういえばお二人は恋人同士でしたねですぅ」
「ミレイナ、からかわないで。でも本当にそろそろ身を固めようかしら」
 スメラギは考え込んだ顔になる。
「じゃあ来年の君の誕生日までにはプロポーズの言葉を考えておくよ」
 くすり、とスメラギが微笑んだ。
「お願いね、ビリー」
 そうして、平和なトレミークルーたちの一日は過ぎてゆくのだった。

FIN

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